第13話 十三日目
昨日は死闘だった。
流石に今日は休もうかと思ったが、何故か足がダンジョンに向かっていた。
ダンジョンに潜る前に武器屋に寄ると、新しい胸当てと腕に取り付けられる盾を購入する。
予算は五万円。
これは昨日の探索で得た収入である。
ゴブリンの武器はどれも質が低く、鉄製の武器も一度潰さないといけないが、それでも量が量なので五万円になった。
これは、宝箱を除けば過去最高額である。
しかも、大人ゴブリンが使っていた大剣は売っていない。
これは俺が使うつもりだ。
あれだけ激しく打ち付けたのに、刃こぼれ一つしていない大剣ならば、これからの探索で役に立つだろう。
それに、大人ゴブリンの動きをトレースして大剣の使い方は覚えている。練習は必要だろうが、十分に使える自信があった。
そして、レジ横でステータスチェックである。
スキルに収納空間が増えていた。
これは何だとダンジョンに入って試してみると、大剣が消えてしまった。
消えた所には空間の切れ目があり、そこに手を突っ込むと大剣を取り出す事ができた。
……これ、凄い便利ですやん。
持っていた荷物を全部入れてみると、問題無く全て入り、取り出せた。どれだけの量入るか分からないが、これは収入アップのチャンスではないだろうか。
これまでは荷物の関係で諦めていた採取部位を持ち帰る事が出来る。それだけでも収入が上がる。テンションも上がる。良いこと尽くめだ。
ダンジョン10階に来ている。
この階では、新たな種類のモンスターは増えない。
ここではジャンボフロッグ、痺れ蛾、ゴブリンが現れるだけである。ただ、エンカウント率が非常に高く、一度に遭遇するモンスターの数も増えている。
油断は出来ない。
大剣を振り抜きモンスターを纏めて倒す。
痺れ蛾の鱗粉も毒耐性があるので、気にしなくて良い。
モンスターとの戦闘が多く、大剣の練習には持って来いの場所である。
大人ゴブリンの動きを真似しながら大剣を振るう、少しのズレを修正して再び振る。それだけで、モンスター5体を倒した。
…油断は出来ない。
次は魔法と大剣を組み合わせた連続攻撃を試してみる。
痺れ蛾二匹を土の弾丸で撃ち落とすと、ジャンボフロッグが串刺しとなり、ゴブリン二体を袈裟斬りにする。
良い感じだ。
確かな手応えに、戦うのが楽しくなって来た。
……危ないな、この感情は抑えよう。
好戦的になっている感情を諌めて先に進む。
それから何度も戦闘を繰り返し、大きな扉の前に立った。
ダンジョン10階にはボスモンスターがいる。
そして、ボスモンスターを倒した先には1階から飛べるポータルがあり、ダンジョン11階に続く階段の前から探索が開始出来る。
ここに来るまで、既に10時間は過ぎている。
それだけの時間を短縮出来るのだ。
早くポータルに登録するべきだろう。
俺は迷いなく、ボスモンスターがいる部屋に入る。
そこに居たのは、完全武装したゴブリン三体と魔法を使うのか杖を持ったゴブリン一体だった。
ゴブリン達の先にはポータルに続く扉、その横には宝箱が置いてある。
うん。
戦い終えて、俺は宝箱を開ける。
中身は短い木製の杖で、明らかに魔法使いが持ってそうなアイテムだった。
魔法使いのゴブリンの横に、ガラス玉が落ちていたので、拾って手の中に消えるのを見届けた。
え?戦いはどうなったかって?
はっきり言って楽勝だった。
9階で戦った大人ゴブリンの方が圧倒的に強かった。
出現する順番を間違えているんじゃないかと疑うレベルだ。
完全武装したゴブリンは、大剣を受け止めることも出来ずに真っ二つになった。
魔法使いのゴブリンは火の玉を飛ばして来たが、速度が遅く避けるのは簡単だった。
お返しとばかりに土の弾丸を飛ばすと、何の抵抗も出来ずに貫かれていた。
こんな簡単に終わるはずがないと、更にモンスターが出現すると思い構えを解かないでいたが、いつまで経っても何も起こらなかった。
俺はボス部屋を出て、その先にあるポータルに登録すると、ポータルを起動してダンジョンを出た。
ーーー
田中 ハルト(24)
レベル 10
スキル
地属性魔法 トレース 治癒魔法 空間把握 頑丈 魔力操作 身体強化 毒耐性 収納空間 見切り
装備 俊敏の腕輪 不屈の大剣 初心者ワンド
ーーー
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