第11話 十一日目

 昨日気付いたのだが、魔法の使用回数が急激に伸びている。しかも、魔力のロスが少なく感じるし魔法もスムーズに発動出来る。


 これはあれだな。

 魔力が成長しているんだな。

 どうやら俺は、魔法使い向きの探索者なんだろう。


 今度からは、積極的に魔法を使って行くべきなのかもしれない。


 俺は警察署から出ると、その足でダンジョンに向かった。


 ん?何で警察署にいるのかだって?


 そんなの決まっているじゃないか、昨日、粘膜まみれで電車に乗ろうとしたら駅員に通報されて、そのまま警察まで呼ばれたのさ。


 世の中理不尽だよな、真面目に働いてるのに連行されるんだから。


 警察署に着くとシャワーを借りて体を洗い、洗濯機を借りて洗濯すると、そのまま朝まで留置所で過ごした。


 思ったより快適だった。


 警察から迷惑かけるなよと念押しされて解放された。


 失礼な、これまでの人生で人様に迷惑掛けた事なんてないわ。



 今日はダンジョン8階に挑む。


 この階に出現するモンスターは、ジャンボフロッグと痺れ蛾である。

 痺れ蛾の直接的な攻撃は体当たりだが、その際に発生する鱗粉が問題だった。鱗粉には痺れさせる効果があり、吸い込みすぎると暫くのあいだ動けなくなる。そこを他のモンスターに狙われたら命は無いだろう。


 そう中々に厄介なモンスターだ。


 目の前には、痺れ蛾とジャンボフロッグがいる。

 先にジャンボフロッグを倒しておきたい所だが、痺れ蛾がひらひらと舞っており近寄り難い。

 魔法で先制攻撃しようかと考えていると、突然ジャンボフロッグが痺れ蛾を舌で捕らえて食べてしまった。


 …ん?


 そして、痺れ蛾を食べたジャンボフロッグは全身が痺れたようで、ひっくり返ってしまう。


 ……。


 俺はジャンボフロッグを倒して先を進む。


 この階は簡単に終わるかもしれん。

 そんな予感がした。



 痺れ蛾は何故かジャンボフロッグとペアで現れる。

 そして暫く見ていると、ジャンボフロッグが痺れ蛾を食べて動けなくなると言うことが続いた。


 ジャンボフロッグ単体で現れる事もあるが、鉄棍で簡単に倒せてしまうので脅威には感じない。


 こうして進んで行くと、やがて9階に続く階段を見つけた。


 そして当然の如く百を超える痺れ蛾が飛んでいる。


 俺は踵を返して来た道を戻り、痺れた状態で倒れているジャンボフロッグ十匹を放り込んだ。

 ジャンボフロッグは数分もすると起き上がり、痺れ蛾を捕食する。そしてまた痺れて動けなくなる。また数分もすると起き上がり、痺れ蛾を捕食する。


 その様子を観察していると、二時間程で全ての痺れ蛾がいなくなってしまった。


 俺は痺れて動けなくなっている功労者達に止めを刺すと、落ちているガラス玉を手に取り、消えて行くのを見届けた。


 この階は楽だったなと思い、俺は次の階に向かった。



ーーー


田中 ハルト(24)

レベル 9

スキル 

地属性魔法 トレース 治癒魔法 空間把握 頑丈 魔力操作 身体強化 毒耐性

装備  俊敏の腕輪


ーーー

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