第9話 九日目

 いやー、昨日は大変だった。


 起きたら夜中の0時を回っていたから焦ったね。

 終電が終わってるから、帰るのは自分の足になる。ダンジョンから住んでいるアパートまで徒歩で二時間は掛かる。

 もし、足の治療が失敗していたら詰んでたね。


 そう、足の治療は成功したのだ。

 傷跡など一切見られず、すっかり元通りである。

 あって良かった治癒魔法。

 これがなければ、俺は間違いなく死んでいた。本当に有り難い事だ。帰りに神社にお参りしておこう。



 さて、今いるのはダンジョン6階だが、この階では新しいモンスターは現れない。


 その代わりと言ってはなんだが、数が多く出現する。

 エンカウント率は上がり、一度に三体の相手なんて当たり前のようにある。


 タイプの違うモンスターを一度に相手するのは、正直きつい。上を警戒して、下を警戒して、背後から襲われる。

 空間把握のスキルがあるから攻撃を避けれているが、倒すのにかなり手こずっている。


 慣れるとそうでもないかもしれないが、今はまだその時ではない。


 何度も戦いを繰り返して進んで行くと、7階に続く階段を見つけた。


 今回はかなり早い発見だ。

 しかも、これまでのように大量のモンスターはいない。

 上を見ても、下を見てもいない。

 更に、更にである。

 階段の近くには宝箱なる物が置かれていた。


 俺のテンション爆上がり。


 スキップして宝箱に近寄ると、二礼二拍手一礼、良い物が出ますようにとお願いして宝箱を開ける。


 宝箱の中身は、最低でも数万円はする物が入っていると聞いた事がある。中には数億といった物まであるそうだ。


 期待を胸に中身を覗くと、腕輪が入っていた。


 手に取って繁々と見てみる。

 シルバーの簡素な腕輪、横線が幾つも入っているが目立った装飾は無い。

 ハズレかなと思い腕に通して装備すると、背後で大量の気配が生まれた。


 …え?


 振り返ると、百を超えるモンスターがこちらを見ていた。

 これまでは一種類だけだったが、今度は四種のモンスターが相手なようだ。


 こりゃやばいと、横にあるはずの7階に続く階段に逃げ込もうとするが、そこには一面だけ色の違う壁があるだけだった。


 これ、トラップですやん。




 死ぬかと思った。

 慣れるのに時間掛かるだろうなと思っていたことを強制的にやらされた気分だ。

 まあ、実際にそうなんだがな。


 これまでより素早く動けたのが勝因だろう。

 魔力も底を突きかけており、割とギリギリの戦いだった。


 フラフラと地面に腰を下ろすと、やはりガラス玉が落ちていた。


 本当にこれなんだろうなと見つめていると、手に吸い込まれるように消えてしまった。




ーーー


田中 ハルト(24)

レベル 8

スキル 

地属性魔法 トレース 治癒魔法 空間把握 頑丈 魔力操作

装備  俊敏の腕輪


ーーー

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