第8話 八日目
今日も今日とてダンジョンに挑む。
まあ、その前にステータスチェックだ。
武器屋のレジ横のモニターで確認してみると、治癒魔法と空間把握が増えていた。レベルも6まで上がっており、中々の成長速度ではないかと思う。
……。
現実を直視しよう。
昨日の戦闘で全ての装備を失った俺は、新たに購入しなくてはならない。
痛い出費だ。
本当に痛い出費だ。
俺は何でダンジョンに挑んでいるんだっけ?
お金のためだ。次の職が見つかるまでの繋ぎでしかない。なのに何故、出て行くお金の方が大きいんだ。
自問自答する。
そこで気が付いた。
安い装備だから、直ぐに装備が壊れて買い直さないといけないんだろうと。
何だ、簡単な事じゃないか。
俺は二十万出して鉄棍と盾と胸当てを買った。
新たに胸当てを買ったのは、昨日の戦闘での教訓を活かしてだ。突っ込んで来たヘッドバットは、的の大きな体を狙っており、胸に当たった時は心臓が止まるかと思った。
だから今度からは胸当てを装備する事にした。
これで、早く稼がなければ来週にはもやし生活だ。
今いるのはダンジョンの五階。
この階から出現するモンスターは、今までのモンスターに加えてカミツキガメが新たに加わる。
カミツキガメの見た目は、そのまんまカミツキガメだ。
ただ、地上のカミツキガメよりも一回り大きく、頑丈で牙に毒が含まれている。毒は致死するほど強くはなく、せいぜい痺れる程度だ。それでも、まともに噛みつかれると、その部分の肉を根こそぎ持って行くほど、強力な顎の持ち主なので油断してはいけない。
俺は昨日学んだのだ。
目の前にいるカミツキガメは、噛み付かんとこちらに向かって来る。動きが遅く、所詮亀だなと余裕ぶっこいてハナホジで待っていると、突然首が伸びて足に食いつかれそうになる。
咄嗟に足を引いて難を逃れるが、ビックリしてションベンちびりそうになった。
伸びた首は元に戻ろうとするが、伸びる時と違ってその動きは遅い。
そんな絶好の機会を逃すはずもなく、鉄棍を叩き込んで、首を潰して倒した。
カミツキガメの買取部位は甲羅だけで、何と五百円で買い取ってくれる。これまでのモンスターの五倍である。流石カミツキガメだ。サスガメだサスガメ。
早速、カミツキガメの甲羅を取ろうと作業に入る。
そして俺は諦めた。
無理、硬い、外れない。
カミツキガメそのものを持って帰っても良いみたいだが、一匹20kgはある物を持って移動なんてしたくない。ましてや、一匹だけなら何とかなるかもしれないが、これが二匹三匹と増えて行ったら、とてもではないが体力が限界を迎えてしまう。
ハズレやカミツキガメ、何がサスガメじゃ、1番金にならんやん。
俺は討伐対象をツノ兎とヘッドバットに絞って狩って行く。
暫く探索していると六階に続く階段を見つけた。
そして、当然の如く群れているカミツキガメ。
百匹を超えるカミツキガメを見て、俺のテンションはダダ下がりである。
やる気の無い俺は、安全最優先でカミツキガメを狩る。
これは戦いではなく、ただの狩りだった。
カミツキガメに近付き、何体か釣って移動すると、噛みつこうと首を伸ばしたのを避けて、鉄棍で首を叩き潰す。
それを何度も繰り返して、百匹以上のカミツキガメを狩って行った。
もの凄く時間が掛かった。
正午に始めた狩りは、18時を回っていた。
余りにも時間が掛かるので、甲羅や他の部位を攻撃してみたが、全くダメージが通らなかった。
おかげで、もうくたくたである。
狩り残しがいないか確認していると、甲羅に躓いて転んでしまった。
手を突いた先にガラス玉があったか分からないが、スキルの空間把握が丸い何かがあったと伝えて来る。
どこに行ったんだ?
消えたのか?
キョロキョロと探してみるが、そこにはあるのはモンスターの亡骸だけだった。
まあ、そこに何も無いのなら考えても仕方ない。
何も無さそうなので、今日はもう帰ろうと出口に向かっていると足に鋭い痛みが走った。
何が!?
驚いて下を見ると、首が潰れてもなお生きていたカミツキガメが足に噛み付いていたのだ。
痛みに視界が歪む。
俺はなりふり構わずに魔法を行使した。
幾つもの土の棘が甲羅ごとカミツキガメを貫き絶命させる。
死んで緩んだ顎を外すと、脹脛の肉が半分落ちかけていた。
俺は残りの魔力を使って足の治療を行う。
治療の途中で虚脱感に襲われるが、構わずに治癒魔法を使い続ける。今度は吐き気を催して、実際に吐いてしまった。それでも治療は続ける。
そのうち意識が朦朧とし始め、魔力を使い果たしたのだと何となく理解した時、俺は意識を失った。
ーーー
田中 ハルト(24)
レベル 7
スキル
地属性魔法 トレース 治癒魔法 空間把握 頑丈
ーーー
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