第7話 七日目
今日でダンジョンに挑んで一週間になる。
別に休みにするつもりもなく、今日も今日とてダンジョンに潜っている。
理由は簡単。
働いているはずなのに、出費の方が圧倒的に大きいからだ。昨日だって、中和剤一万五千円を二つも買ってスライムを倒した。
それで手に入った収入は幾らだ?
一万円だ。
つまりマイナス二万円だ。
おいおい、どういう事だ?
俺は働いたんじゃないのか?
まさか、俺は知らないうちに詐欺に遭っているのか?
恐ろしい世の中になったもんだ。ブラック企業が世に蔓延るのも納得だぜ。
気を取り直してダンジョン4階に挑戦する。
ここで出現するモンスターは、前回に引き続きダンゴムシ、ツノ兎、スライム。更にこの階から追加で現れるのがヘッドバットだ。
ヘッドバットは頭突きの事ではない。
頭が大きなコウモリの事だ。
ヘッドバットは普通のコウモリよりも動きは遅いが、大きく頑丈な頭で攻撃して来る厄介なモンスターだ。
…頭突きやってたな。
空を飛んでキィキィ五月蝿いヘッドバットを棍棒で叩き落として踏み付けると簡単に倒してしまえる。
そんな手強いコウモリだ。
…今までで1番弱いかもしれん。
せめて真っ暗な場所で、コウモリ特有の超音波で物を認識する能力を駆使して攻撃してくるなら分かるが、電気が点(つ)いた部屋くらい明るい場所で見逃すはずもなく、簡単に捉えてしまえる。
完全に場所の選定ミスである。
このダンジョン作った奴がいるなら、ヘッドバットに謝罪するべきだろう。
それからズンズン進んで行く。
ツノ兎とヘッドバットは倒して行き、ダンゴムシは無視をして、スライムからは逃げて対処する。
ああ、忘れていたが、ヘッドバットの採取部位は右の牙だ。値段は100円。ヘッドバットは何故か頭と右の牙だけが発達しており、大変バランスの悪い姿をしている。
それで気付いたのだが、ヘッドバットは攻撃を避けるときは右に旋回しようとする。それに合わせて攻撃してやれば、ほぼ百発百中で当たる。
そんな風にヘッドバットの観察をして進んで行くと、五階に続く階段を見つけた。
おっ、今回は何も無いな。
そう思って階段に向かうと、天井から大量の気配を感じ取った。
そっと天井を見上げると、そこには百羽を超えるヘッドバットがこちらを見下ろしていた。
俺はふうっと息を吐き出す。
「ですよね〜」
俺は棍棒と盾を構えた。
死闘だった。
ダンジョンに潜って、これほどの傷を受けたのは初めてかもしれない。
全身打撲だらけで体が痛む。
もしかしたら骨が折れているかもしれない。
盾も壊れ、棍棒も全て折れた。
誰だ最弱なんて言った奴、めちゃくちゃ痛いじゃないか。
傷を治すポーションも売ってはいるが、安い物でも一個一万円もするので買い渋っていた。今ではそれが悔やまれる。
戦い終えてその場に腰を下ろした。
手を突いた所にガラス玉があったような気がしたが、手を上げても何も無かったので気のせいだろう。
あー治療費高く付くだろうなー、嫌だなー治んねーかなー。
なんて思っていると、突然、体が淡く輝いて傷が治っていく。
何だ何だと驚き、そして動けなくなった。
これはあれだ。
魔力切れだ。
また何かのスキルを手に入れていたのだろう。
まあ何にしても…。
「助かった〜」
ーーー
田中 ハルト(24)
レベル 6
スキル 地属性魔法 トレース 治癒魔法 空間把握
ーーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます