第24話どこにでもバカはいる

それは配信を始めてすぐ挨拶をしているときのことだった。


「シエルでーす。今日も配信始めるよー」


「どうも、ネージュです」


{待ってましたー}

{今日も二人のイチャイチャに期待!}


「今日はネージュの料理とテイムを試してみるよ」


{あれ、他のボス倒して回らないの?}


「あ、今コメントあったけど他のボスは倒しに行かないよ。別に倒してもいいんだけどそこまで意味は感じないし、変な嫉妬買ってもめんどくさいしね」


{あー、めんどいの湧くからなー}

{MMOあるあるだよね}


「あと、ゲーマー的な感覚だと、東西南北すべてのボスが倒されたタイミングでなにかある気がするんだよね」


「シエルさんの勘が当たるかはわからないですけど、当たっていた場合ほかのプレイヤーが困りますからね」


トッププレイヤーを譲るつもりはないが、別にほかのプレイヤーの邪魔をしたいわけではないのである。


「じゃあ、今から料理道具を買いに行こう」


そう言って場所を移動しようとした僕たちに急にすごい勢いで見知らぬ男が近づいてくる。





「見つけたぜ! チーター野郎!!」




急に現れた金髪の男が僕に喧嘩腰で詰め寄ってそんなことを言ってきた。それにしてもチートとはひどい言いがかりもあったもんだ。




「僕はチートなんて使っていないんですが何の根拠が合ってそのようなことを?」




こういう手合いは話が通じないことが多いが一応相手の言い分を聞いてみる。




「っは! そんなのお前の全てだろうが。刀の耐久値の削れだって明らかに他より遅いし、そもそもβテスターでもないお前が北のボスなんて倒せる訳ないんだよ!!」




「刀の耐久値に関してはまだ確定ではないですが、刃をしっかり立てて使えているかの差でしょう。それにβテスターじゃないからボスが倒せないという訳ではないでしょう」




「うるせえ!! ニュービーがβテスターより強いわけないんだよ!!」




なるほど。今のこいつの発言で何となく背景が分かった。恐らくこの男はβテスターでそれをステータスだと思っていたが、βテスターじゃない僕が自分より強いのが気に食わないのだろう。




「βテスターは確かに多くのプレイヤーより先に行ってでしょうが、だからといってそうじゃない人より強いというわけではないですよ?」




「俺はβ時代、攻略の最前線にいたんだぞ!!」




こいつが最前線? どうみてもそんな風には見えないが。仮にそれが本当のことならば先輩はこいつのことを知っている可能性があると思って横で静観していた先輩に尋ねてみる。




「シエルさん、この人ご存知ですか?」




「知らない。そもそもβテストの最前線は私とフィリップのところだけだった」




そうやって先輩がバッサリ切り捨てると、




「そんな!? 一緒に狩りに行ったじゃないですか?」




そんなことを言う男。というかこいつの実力では先輩の戦闘について行くことなど不可能だと思うのだが。(この男に限らず先輩の戦闘について行けるプレイヤーなどほとんどいないのだが)そんなことを考えていると、先輩が思い出したように、




「あー、あのしつこくナンパしてきた迷惑なやつか。一緒に狩り行ったんじゃなくて断ったのに勝手についてきただけでしょ」




「えー、勝手についてくるってただのストーカーじゃん」




普通に気持ち悪くて引いてしまう。すると、男は顔を真っ赤にして語気を荒げて




「うるせえ!! とにかくお前はシエルさんから離れろ。βテスターじゃないお前じゃ足手纏いなんだよ!!」




そんなことを言ってくる。というか最初は僕がチーターだなんだって話だったのにいつのまにか先輩と離れろってまじで滅茶苦茶だなこいつ。もう無視しようかなと思っていたら、




「足手纏い? そんなことない。ネージュはあなたなんかよりよっぽど強い」




先輩が火に油を注ぐようなことを言う。案の定それにブチ切れた男から、




「じゃあ、俺とお前どっちが強いか決闘だ!!」




と、決闘を申し込まれるのだった。僕の前にメッセージが現れる。




『【ジークフリート】から決闘が申し込まれました。受諾しますか?』



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