第21話お嬢様裁縫師フィノ
アンナにそう指摘され自分がろくな装備をしていないことに気づく。幸い攻撃はほとんど喰らっていないため耐久値はそこまで削れていないが(というか攻撃をまともに喰らうと一撃で死んでしまうぐらいの防御力しかないのだが)この装備で北のボスに挑んでいたと思うと我ながら無謀だなと思ってしまう。
「言われてみたらそうだね。何か良いのない?」
「私は武器専門だから、今服飾専門の子を呼ぶね。おーい、フィノちゃーん」
すると奥から金髪ドリルでいかにもお嬢様のような姿の高校生くらいの少女が走ってきて、そのまま僕の両手を掴んできた。
「見つけましたわ! わたくしのモデルを!!」
何故か興奮している様子の少女のテンションについていけず戸惑っていると我に帰ったのか自己紹介をされた。
「思わず興奮してしまいました。わたくしはリリアン商会の服飾担当のフィノと申しますわ。どうぞよろしくですわ」
「僕はネージュと申します。よろしくね。ところでモデル云々はどういうことかな?」
お互い自己紹介を終え、先程の発言の意味を尋ねる。
「そうですわ!! あなたにはわたくしの作る装備のモデルになって欲しいのですわ。あなたのその刀を携えた佇まい、わたくしのインスピレーション湧きまくりですの」
「ごめんね、ネージュくん。この子和服オタクのお嬢様で刀を持ってる君の姿を見て興奮しちゃってるみたい。悪い子ではないんだけど」
「いや、別に僕は大丈夫なんだけど。それで僕が君の装備を着れば良いのかな?」
「そうですわ。もちろん多少割引はさせていただきますわ。それでどうでしょう?」
リリアン商会の人だからまず間違いなく腕もいいだろうし、僕にデメリットもないだろうから受けても良いだろう。そう判断した僕は了承の返事をし、早速グレーターウルフの毛皮を見せてみると、
「うーん、悔しいですがわたくしではまだこの素材は扱いきれないですわ」
やはりアンナと同じでこの素材を扱うのは難しいようだ。この後、アンナと同じように素材を預けて1週間後に取りに行くことになった。それまで初期装備のままだと不便だろうからととりあえずの品を持って来てくれた。
[森蜘蛛糸の羽織り]
・森蜘蛛の糸で編まれた羽織り。金属製の防具に比べるとさすがに防御力が低いが動きやすさは段違い。同じ素材で並の職人が作った物と比べるとその性能は段違い。
製作者:フィノ
なるほど。さすがはリリアン商会といったところか。説明文を読んでもフィノの腕の良さがよくわかる。早速装備してみると、
「まあ! まあまあまあ! やはりわたくしの目に狂いはありませんでしたわ。あ、あの刀抜いてくださいませんか?」
フィノの要望に応えて鞘から刀を抜く。
「きゃああー! 素晴らしいですわ! 写真撮ってもよろしいでしょうか?」
了承すると、さまざまな角度から何枚も写真を撮られた。しばらくすると撮り終えたフィノから
「ふー、満足しましたわ。それでは1週間後にまだ来てくださいまし。あと何か要望がありましたらできるだけ叶えるようにいたしますわよ」
そう言われたのでフィノに要望を伝える。
「それじゃあ、こう、足の動きが隠れる感じの着流しをお願いできるかな」
剣術では間合いがとても重要なのでそのための足の動きがが相手から分かりづらくなるというのは大変なアドバンテージになる。
その後詳しいところをフィノと詰めた後、別れを告げ先輩と合流した僕たちはリリアン商会を後にするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます