第20話再びのリリアン商会

ボスを倒して街に戻ってきた僕たちは再びリリアン商会を訪れていた。テントの近くに行くと目ざとく僕たちを見つけたリリアンが近づいてくる。




「まさか、本当に北のボスを倒すとはね。フィリップたちでも西エリアでギリギリだったのに驚き通り越して少し呆れるわ」




「私とネージュの2人なら当然の事」




「ここで買った新しい刀のおかげですよ。本当に助かりました」




「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない。アンナにも直接伝えてあげてちょうだい」




テントの中に入った僕はリリアンと談笑している先輩を置いてアンナのところに向かった。武器の整理をしていたアンナは僕の姿を見つけると作業を中断して笑顔で僕のところに走ってくる。




「いやーもう戻ってたんだ。まさか本当に北エリアのボスを倒しちゃうなんてね。ワールドアナウンス聞いて思わずガッツポーズしちゃったよ」




「アンナの武器のおかげだよ。初心者の刀のままだったらもっと厳しい戦いになってたと思う」




実際、初心者の刀だったらあのボスには本当に微々たるダメージしか与えられずにボスを倒す前に武器の耐久値が先になくなってしまっていただろう。




「役に立てたならよかったよ。ところでボスの素材でなんかいいの持ってない? よかったらそれで新しい武器作るけど」




アンナにそう尋ねられた僕はまだ確認していなかったボス討伐の戦利品を確認する。




[グレーターウルフの毛皮]


・ウルフのボスであるグレーターウルフの毛皮。ただのウルフの皮とは防御力も耐久性も桁違いな反面、加工にはそれなりの腕が必要。




[グレーターウルフの牙]


・ウルフのボスであるグレーターウルフの牙。下手な金属よりも硬いその牙は武器にするのに最適。ただし加工の難易度は高い。




ここまではウルフの素材の上位互換のようなものだったが一つだけウルフでは無かったものがあった。




[スキルチケット×2]


新しいスキルを手に入れることのできるチケット。






「ねえ、アンナ。スキルチケットって何か知ってる?」




「スキルチケット? シエルちゃんから聞いてないんだ。えっとね、スキルチケットはボスを倒した時に手に入るアイテムでその名の通り新しいスキルを入手できるよ」




「なんか2枚あるんだけど、ボスを倒したら2枚手に入るの?」




間違って先輩の分まで僕に入ってきていないか少し心配になった僕はそう尋ねた。




「あー、それは初討伐報酬だよ。2回目以降にボスを倒す人は1枚しか手に入らないみたい」




どうやら先輩の分まで取ってしまったわけではないようだ。しかし、初討伐の人だけ2枚手に入るとなると差が広がってプレイヤーからの不満が溜まりそうな気がするが。その辺はどうなっているのかと尋ねると、




「あー、それに関してはそこまで問題ないと思うよ。このゲーム、セットできるスキルは10個までで、それ以上スキルを手に入れると残りは控えスキルになって入れ替えないと使えないようになってるから」




なるほど。そこら辺は上手くやっているらしい。それにしてもアンナは詳しいな。このゲームはそんなに情報を多くくれないからそこまで詳しくなるのは難しい気がするのだが。




「なるほど。教えてくれてありがとう。ところで何でアンナはそんなこと知ってるんだ?」




「あー、私たち生産職は結構NPCとの交流が多くてね。割と聞いたら教えてくれることが多いからそれで色々知ってるんだー。情報は商売に欠かせないからね。ってそんなことよりも早くボスの素材を見せてよ」




おっと、話が脱線していた。アンナの要求通り毛皮と牙を見せる。アンナはそれをしげしげと見つめた後、




「んー、これを加工するのはまだ私のレベルが足りないかなー。完全に今の段階で手に入る素材のレベルじゃないよ」




どうやら、おそらくFWO1の鍛治師であるアンナでも扱えない代物のようだ。この素材はしばらくお蔵入りかなと残念に思っていると、




「良かったらこの牙私に1週間預けてくれないかな? 1週間あれば、ギリギリこれで刀作れるぐらいになると思う」




アンナからそう提案された。断る理由もないため了承し、牙の素材をアンナに送る。




「ありがとう。ところでネージュくん、刀以外の装備は初期のままだよね。鎧とかはネージュくんには合ってなさそうだけど羽織物ぐらいあった方がいいんじゃない?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る