第15話ボス戦②
であるとするならば、
睨み合いに焦れたボスがこちらに突っ込んでくるタイミングで僕は体を前に倒し自分の体重と刀の重さ全てを推進力に変える。相手が僕を切り裂く前に勢いを全て切先に集中させ相手の喉仏を狙って神速の突きを繰り出した。
やはりかなり硬い感触だがなんとか喉を貫くことに成功する。反撃を喰らわないために怯んでいるボスの体を蹴り刺さっていた刀を抜く。そのまま追撃を与えるため普段片手で振るっている刀を両手で握り上段に構える。
——この世で1番強い武器は何か。男なら1度は調べたことがある人も多いだろう。人によって結論は異なるだろうが、切るというただ一点に関して言えば日本刀より優れた武器を僕は知らない。
僕が小さい頃、師匠にもし刀で切れない敵が現れたらどうするのかと尋ねたことがある。師匠はその問いに初心者でも刃物で人を切りつけようとした時、錆びてさえいなければ刃が通らないことはないと思うがと前置きを置いた後、
「極めたら日本刀に切れないものなど存在しない」
そう答えた。もちろん今の僕が剣の道を極めたとは口が裂けても言えないが目の前の相手すら切れないほど自分が弱いとも思わないし、そんな甘い鍛え方はしていない。
そんな想いを抱きながら、僕は地面が割れるほど強く踏み込み僕が修めている剣術の中でもかなり威力が高い技を繰り出す。
——雲耀
流派によっては奥義などといった場所に分類する所があるほど威力が高いその技はボスの体をしっかりと切り裂いた。致命傷には至らなかった攻撃だが、先ほどまで多少僕を舐めていた様子があった雰囲気が一気に鋭くなる。
「はは、このゲームは本当にリアルだな」
普通のウルフなどでは感じなかった、相手を殺すという明確な意思を持った殺気が僕に向けられる。味覚や聴覚といった誰でも感じられる分かりやすいものではない殺気といった酷く曖昧な感覚をどう再現したのか分からないが、久しく感じていなかった感覚に僕の剣が研ぎ澄まされていくのが分かる。
本気になったボスと全盛期に更に近づいた僕が交差する。激しい戦いになるが時間が経てば経つほどボスの攻撃に慣れた僕の攻撃が確実にボスの体力を削っていく。膂力こそとんでもない差があるが、ボスの攻撃はそのほとんどが普通のウルフの動きを早くして威力が上がったぐらいだ。
力比べにならないようにだけ気をつけてボスの体を確実に切り裂いていく。急所を狙う余裕も出てきてボスの体力を削るスピードが上がっていく。そのまま圧倒できるかと思われたがボスの体力が半分を切ったタイミングで勝手に沸いていた取り巻きのウルフの群れが消え、ボスの体から赤いオーラが発される。
嫌な予感がした僕は一度ボスと距離を取り、取り巻きを相手していた先輩と合流する。
「こっからが第二ラウンドだね、ネージュ」
疲れた様子が一切見えない先輩が話しかけてくる。
「ええ、そうですね。集中していきましょう」
言葉通り油断する気は一切ないが、取り巻きを消してしまうのはとんでもない悪手だと思う。もちろん赤いオーラを纏っているボスは先程までより強化されているのだろうが僕と先輩が合流した以上一切負ける気がしないし、なんならボスの強化より僕たちが一緒に戦うことの方が強化幅が大きい気がする。
そんなことを思いながら第二ラウンドが始まった。
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