第14話ボス戦①

ボスがいるエリアにたどり着くまでに新しく手に入れた刀の試し切りをする。クマのような姿のモンスターの攻撃をいなして無防備になった首を切り裂く。動きこそウルフなどよりも遅いものの攻撃力や防御力は高いため、初心者の刀では刃が通り辛かっただろうが新しい刀は問題なく切り裂いた。




やはりいい刀だ。先ほどまで使っていた初心者の刀ではここまで簡単に切ることはできなかっただろう。アンナの腕の良さに感心しながら道中を進む。




しばらく進んでいると少し開けたエリアに出た。進もうとすると、




『この先ボスエリア。一度入るとボスを倒すか、死ぬまで出ることはできません。進みますか?』




というメッセージが現れた。どうやらこの先がボスエリアのようだ。どこにもボスがいるようには見えないがおそらくあのメッセージにYesと返して中に入るとボスが現れるのだろう。とりあえず1度Noを押し、先輩と最終確認をする。




「着きましたねシエルさん」




「ん、準備できてる?」




自分の体力が減っていないことを確認し、装備にも問題がないことを確認する。ここまで僕も先輩も一撃もくらっていないので体力は一切削れていない。そのため刀を買うついでにリリアン商会で買っていたポーション類は一切使っていない。




「ええ、問題ないです」




確認を終えた僕は先輩に返事をする。




「ん、なら行こっか」




{もうボス戦か}


{↑それな、早すぎるwしかも北だし}


{頑張れー}


{勝てますように}


{さすがにボスは厳しい気がするが}


{でもこの2人ならいってくれそう}




ボス戦ということもありコメント欄も今まで以上に盛り上がっている。さすがに難しいという意見といけそうという意見が五分五分といった様子だ。




まあ、確かに北のボスに挑むには早すぎるといっていいだろう。1番難しいエリアなのに加え、僕たちは2人だけだ。西エリアのボスを倒したパーティーが5人なのを考えると厳しいという意見は当然だ。むしろいけるという声が半分近くあるのがおかしいぐらいだ。




まあ、とはいっても負けるつもりは一切ない。先輩も僕も気負ってる様子はないし、僕の感覚も少しずつ戻ってきている。




「ええ、行きますか」




メッセージにYesと返し中に足を踏み入れた瞬間——




「オオオォォォーーーン!」




モンスターの雄叫びが響き渡る。あたりを見回すと中に入るまでは何もいなかったはずの場所に今までのウルフよりずっと大きな狼型のモンスターが現れる。またその周りには普通のウルフが取り巻いている。




とりあえず通じないことは分かっているが識別のスキルを発動させる。




【識別】




種族名:グ●●ター●ルフ




とうとう種族名すら読み取ることができなくなった。おそらく、グレーターウルフだと推測できるが、名前すら読み取れないということは最初にウルフと戦った時よりステータスに差があるということを意味している。




「シエルさん、とりあえず一太刀浴びせに行くので取り巻きはお願いします!」




「ん、了解」




切ってみないと分からないこともあるので取り巻きは先輩に任せて、僕はボスに攻撃に行くことにする。相手が動くより先に相手に肉薄する。普通のウルフよりも素早い反応を見せるが、それでも遅い。




掬い上げるように放った一閃はボスの下顎を切り裂くと思われたがあまりの硬さに刃が通らない。




「硬えなオイ!」




今度はお返しとばかりにボスが爪で僕を切り裂こうとする。受け流してカウンターを喰らわせようと試みるが、膂力に差がありすぎたため、かろうじて受け流すことには成功するもののカウンターには繋げられない。




「ステータス差ってのは厄介だな」




そもそも当たり前のことだが剣術というのは基本的に対人間を想定している。もちろん人間相手でも自分より膂力が上の相手と戦うことがあるのでそれを想定した技なんかもあるのだが、ここまで差があるのは人間相手ではあり得ない。




一度仕切り直し、ボスの体力を確認するが数ドットしか削れていない。これは厳しい戦いになりそうだ。そう思いながら、先輩に目を向けると取り巻き相手に無双していた。あれだけの数の敵を相手にするとクールタイムの管理がカツカツで大変だと思うのだが問題なく戦闘を続けている先輩はやはり普通じゃない。




先輩の方は特に問題なさそうなのでボスをどうにかする方法を考える。生半可な技ではあの硬さを貫くことはできないだろう。

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