第11話毒舌な先輩
そんな話をしていると突然ワールドアナウンスが流れた。ボスの討伐か。
「ああ、フィリップの所か」
先輩が知っている風なことを言う。
「知り合いなんですか?」
「知り合いってほどでも無いんだけど、一応ベータ時代1番強かったパーティーのリーダーだから少しはね」
なるほどベータ時代のトッププレイヤーだったのか。東じゃなくて西エリアのボスが先に倒されたのが少し気になっていたがそれだったら納得だ。
「どれくらい強い人なんですか?」
「ネージュとは比べ物にならないぐらい弱い」
少し興味が湧いたので話を聞いてみると想像以上に辛口の評価だった。
「oh……随分毒舌ですね」
「毒舌? そんなつもり無い。純粋な事実。それにフィリップの所は個人の力というよりはチームワークの良さの方が目立つ」
なるほど、確かに統率の取れた集団は個人の実力以上の力を発揮するものだ。そんな風に納得していると、
「ま、そのチームワークも私とネージュに比べたらそこら辺の雑魚と変わらないけど」
また毒を吐くのだった。
「やっぱり嫌いでしょ、シエルさん」
「ネージュも会ってみたら分かる。フィリップのウザさが」
{あ〜、フィリップは確かにねー}
{悪い人ってわけでは無いんだけどね笑}
{くそ、あのイケメン死ねばいいのに}
{↑落ち着け、まあ、完全に同意だが}
どうやらコメント欄でも嫌っている人が一定数いるようだ。
「西とはいえ、フィリップに先越されたのはムカつく」
どうやら先輩はフィリップさんのことが大分嫌いらしい。
「ネージュ、私たちは北のエリアボス倒すよ」
フィリップさんに先を越されたのが余程むかついたのか、そんなことを言い出す。
「え、今からですか!?」
突然のことだったのでびっくりしながら先輩に尋ねる。
「今から!! って言いたいとこだけど先にネージュの刀、新しくしようか」
さすがに今すぐにという訳では無いようだ。確かに今の刀でボスと戦うのは多少不安が残る。武器を買いに行くというのは良い判断だろう。ただ問題があるとすれば、
「サービス初日ですけど、良い刀売ってる所ありますかね?」
売っている所があるかどうかだ。
「多分、問題無い。ベータ時代に商会やってた優秀な知り合いがいる」
どうやら先輩に当てがあるようだ。補給線を構築するのは重要な事だ。ここは先輩の恩恵にあやかろう。
「あ、僕お金全然持って無いです!」
大事なことを忘れていた。僕は最初にプレイヤーに与えられる1000Gしか持っていない。流石にそれでは足りない気がする。
「そこは心配する必要はない。私たちはどこで戦ってると思ってるの?」
「え、北エリアですけど。あ、そうか」
「分かったみたいだけど、そうここは北エリア。他のプレイヤーは行っても西なんだから北エリアの素材を売れば充分お釣りが出る。」
確かにそうだった。ここでも問題無く戦えているせいでどうもここが僕ら以外にプレイヤーを見かけない1番難しいエリアだということを忘れてしまう。
「それじゃ、街に戻りましょうか」
「そうですね、シエルさん」
そうして、僕たちはボス戦に備えて装備を整えるために街に向かうのだった。
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