第8話過去について

「ネージュ、反省会もいいけど、そろそろ次行くよ」


脳内で先ほどの戦闘の問題点とその改善策及びシミュレーションをしていた僕は先輩の声で反省会を切り上げる。


「分かりました、シエルさん」


返事を先輩の後に続く。ふと意識を配信画面に向けると視聴者から先ほどの戦闘に関する称賛の声や驚きの声が目についた。自分としては納得のいく内容では無かったが視聴者からの評価は上々のようだ。少ないとはいえ上がっていたシエルさんの足を引っ張るから配信に来んなといったコメントがなくなっている。その様にコメント欄を眺めているといくつか質問が来ていることが確認できた。


{どこでそんな戦闘技術を磨いたんですか?}


{いつから剣を振ってたんですか?}


{剣を習い始めたきっかけは何ですか?}


「いくつか質問が来ている様なので順番に答えていきますね」


「えっと、先ずどこで戦闘技術を磨いたのか、ですけど、これは高校卒業まで所属していた道場ですね。通い始めたのが3歳からなので計15年間剣を振ってきました。まあ通うというかほぼ道場に住んでたんですけど」


{住んでた?}


{どゆこと?}


そこまで話した所で更に視聴者から疑問が出てきた。この理由には僕の両親が絡んでくる。


「あ~、少し暗い上に長い話になるんですけど、僕の両親って僕が高校2年生の時に僕を置いて蒸発したんですよ。


そのあと何とか高校は卒業して進学はせずにブラック企業で2年間働いていたところをシエルさんに声かけられて今こうして配信を一緒にさせて頂いてるんですけど、高校生の子供を置いて蒸発するような人がまともな訳がなくて。


僕が小さいころ虐待を受けてたんですよ。それである日、家から逃げ出して街をさ迷っていた時に道場の師匠に助けられて、暴力から身を守る為の護身術を学んだんです。


そしたら、それが意外に楽しかった上にどうやら僕には戦闘の才能があったみたいで、それを見いだした師匠に家には居たくないだろうからここで生活してわしの技を習得せんかと提案されて、それを受け入れた僕は高校卒業までのほとんどの時間を師匠の道場で過ごした訳です。


まあ、だから両親が蒸発したこと自体には大して傷つかなかったんですけど、お金のことは困りましたね。あんな両親でも必要な金は払ってもらってましたから」


あははと笑って話を終えると、コメント欄では、


{波乱万丈過ぎるよ…}


{ネージュくん、今まで大変だったんだね…}


{師匠に出会えて良かったね}


僕の過去を労る言葉がたくさんあった。ここは暖かいな。両親は最悪だったが、それ以外で僕が出会って来た人たちは素晴らしい人ばかりだ。特に師匠と先輩には、頭が上がらない。もし、あの時師匠に出会えてなかったらと思うとゾッとする。まず間違いなく今こんなに元気で生きていることはなかっただろう。


そう思うと近いうちに師匠の所に顔を出しにいくべきだろう。卒業後ブラック企業に入ったせいで、1回も行けてないし。


近いうちに師匠に会いに行くことを決めた僕に先輩の声がかかる。




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