第6話いきなりラブコメ

「そうでした! えーっと、みなさんこんにちは。えー、本日からシエルチャンネルに出演させていただきます、ネージュと申します。何卒よろしくお願いします」




いきなりのことで頭が動転していて、考えてきていた自己紹介用のセリフも飛んでしまったが、




{よろしくー}


{硬い硬いw}


{ようやく彼氏さん来たなー}




概ね好意的な反応が多そうだ。もともと女性1人でやっていたチャンネルに男が加わるなんてガチ恋達などに嫌われると思っていたのだが。それに先輩はすごく美人だし。




「予想より好意的な反応が多くてびっくりです。あ、あとそこ、別に僕と先輩は付き合ってないですからね」




彼氏さんなどというコメントがちょくちょくあるので訂正しておく。すると、




「え、私とネージュ付き合ってないの?」




何故か先輩から疑問の声が上がる。




{おっと、これは修羅場か?}




コメントからはそんな声が上がる。




「えっ、付き合ってないですよね?」




僕はそんな話をした覚えはないので少し不安になりながらも先輩に確認する。




「この前、私と一緒に来てって言ったらOKしてくれた」




すると先輩はもう忘れちゃったのとでも言いたげな様子でこちらを見つめてくる。




{女の子からの告白を忘れるなんてサイテー}




コメント欄でもそんな発言が相次ぐ。まずい、このままでは女の子からの告白を忘れたサイテー男という烙印を押されてしまう。




「いや、それは先輩と一緒に配信をするっていう話ですよね?」




慌てているせいでシエルさんではなく先輩と呼んでしまう。




「普通に考えて、一緒に配信するぐらいで私と一緒に来てなんて重い事言わない」




「いや、でもあの場面だったらそういう意味とは捉えないですよ」




「そう、ならもう1回言う、私のものになって」




{公開告白キタコレw}


{告白男前すぎるw}


{これに応えなきゃ男じゃない!}




1万人もの人が見ている配信中に先輩に告白されてしまった僕は思わず赤面してしまい、




「や、あの、えっと、ちょっと時間くれませんか?」




しどろもどろになりながらそうお願いすると、




「やだ、もう逃がさない」




先輩が僕の顔を挟んで逃がさないようにして、顔を近づけてくる。




「や、あの先輩近いです」




先輩の綺麗な顔が至近距離にあって、平静を保つことのできない僕はもはや顔から火が出るのではないかと思うほど赤くなっている。




{男と女の立場逆転してて草}


{ネージュくん顔真っ赤w}


{かわいい}




「私と付き合うの嫌? そんな事ないよね」




「嫌とかではないですけど、その、」




「私のこと好きだよね。見てたら分かる。だったら付き合おうよ」




好きじゃない訳ない。高校時代だって告白された時すごく嬉しかったし、できることなら恋人になりたかった。




「僕でいいんですか? 先輩ならもっといい男たくさん捕まえられますよ?」




最終確認をする。




「前も言ったけど、あなた以外考えられない」




しっかり僕の目を見てそう言う先輩。




「えっと、それじゃあ、よろしくお願いします」




精一杯の勇気を振り絞って告白の返事をする。




「ん、ありがと。嬉しい」




そう言って笑った先輩の顔は今まで見てきたどの先輩よりも美しくてかわいい笑顔だった。
























「あ、同接2万人いった」






先輩のその一言で現実に戻された僕は配信中だったことを思い出して先程までの様子を1万人を超える人に見られていたことに思い至ってまた顔が赤くなる。コメント欄では






{カップル成立おめでとうー!}


{ネージュくんさっきからずっとかわいいw}


{シエルちゃんの想いがやっと叶って良かった!}




などと祝福の嵐。投げ銭も信じられないぐらい来ている。




「視聴者のみんな、今まで相談に乗ってくれてありがとう」




{いえいえー}


{ずっと話してた後輩くんと恋人になれてよかったですね}


{この日をどれだけ待ち侘びたことか}




「先輩、もしかして僕のこと過去の配信で話してました?」




「え、うん。どうやったら私のものにできるかとかみんなと話し合ってた」




道理でみんな、僕のことをスッと受け入れる訳だ。今までの配信でそんなことを話していたなら僕がいずれこのチャンネルに出るのは予定通りってことか。どんなことを配信で言われてたのが少し気になるが今はいいか。




「なるほど、そういうことでしたか」




「ん、そんなことよりそろそろフィールドに行こう」




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