第5話配信? もう始めてるけど?

lv2のスキルがあるがこれはβテスターだからだろう。よく見れば先輩が羽織っているローブもどこからどう見ても初期装備ではない。ステータスで気になったところを質問してみる。






「シエルさん、この歩行術っていうスキルはどんな効果があるんですか?」




「歩行に関する行動にアシストがある」




「つまりどういうことですか?」




よく分からない返答に詳しい説明を求める。




「たとえば、森とか砂場とかの歩きにくい地形の場所でも普通の陸地に近い感覚で歩行できるようになる」




名前からして微妙そうなスキルだったが思ったより有用そうだ。




「名前より有用そうですね。シエルさんが不遇スキルをとってしまったのかと思いました」




そう冗談めかして言うと、




「不遇スキル取ったのはネージュの方」




大きなため息を吐いてそう返された。




「え、そんなつもりないんですけど。どのスキルが不遇なんですか?」




「死点打ちに、テイム、料理も不遇。」




oh……何と5分の3が不遇なようだ。




「えっと、どういうところが不遇なんですか?」




どれも結構使えそうだが。




「死点打ちは相手の急所にピンポイントでしっかり攻撃を当てるのが難しいから活かせなくて、不遇って言われてるけどこれに関してはネージュなら当てられるから問題ない。むしろナイス選択だと思う」




なるほど、そういうことか。確かにその理由なら僕なら問題なく運用できるだろう。




「テイムに関しては確率なのか、条件があるのか分からないけどなかなかテイム成功しないから、料理に関しては大したバフもかからないからってのが不遇と言われる理由ね」




「いや、待ってください。料理スキルを使えばテイムが成功しやすくなって相性良いとかありません?」




「それも試した人がいる。自分で作った料理をあげようとしたそのプレイヤーは料理を地面に置いた瞬間モンスターに襲われて殺された」




oh…僕の考えたコンボが完全に否定されてしまった。ということは、死点打ちはいいとしても僕は5つのスキルの内2つも不遇スキルをとってしまった完全にスタートダッシュに失敗した人じゃないか。そう思い落ち込んでいると、




「でもネージュの場合、スキルはあんまり関係ない。そのリアルスキルで十分お釣りがでる」




と、先輩が慰めてくれる。その慰めを受けて僕は気持ちを切り替える。切り替えの早さには自信がある僕は




「そういえば、配信はいつから始めるんですか?」 




先輩にそう尋ねる。すると、






「配信? もう始めてるけど?」




そんな、とんでもないことを言うのだった。






「はぁー!?」

                 








先輩が配信画面を見せてくる。




{やっと気づいたw}


{彼氏さん、こんちわ}


{初めましてー}




たくさんのコメントで溢れていた。配信画面の下の方に接続数が表示されているが……1万人!?




「え!? いつから始めてたんですか!? それに接続1万人って!」




動揺が抑えられず先輩を問い詰める。




「ネージュと合流する前から」




「ってことは今までの会話も全部聞かれてたってことですよね?」




「そうだね」




なんてこった。もともと先輩1人のチャンネルだったところに急に入ることになるんだから視聴者の方に失礼にならないように自己紹介とか色々考えてたのに。




「もうちょっと、こう打ち合わせとか色々あるじゃないですか。何でいきなり始めてるんですか」




「打ち合わせ? そんなの私とネージュなら必要ない」




何故か自信満々でいる先輩に僕はついていけない。




「何でそんな自信あるんですか」




「そんなことより早く視聴者に自己紹介したら?」




そうだった! あまりの衝撃で基本的なことを忘れてしまっていた。

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