第4話先輩と合流

視界いっぱいの光が収まると、目の前には石畳の上に木造の建築物が並ぶまさにファンタジーといった街並みが広がっていた。大注目のゲームのサービス開始直後とあって多くのプレイヤーで賑わっている。中には、どう見ても初期装備ではない格好をしている者がいるが恐らくβテストでの特典だろう。


「それにしても本当にリアルな世界だな。風を受ける感覚や、どこからか漂う美味しそうなにおいまで現実そのものって感じだ。おっと、ぼんやりしている場合じゃなかった。早く先輩と合流しないと」


βテスト参加者の先輩は自分より早くキャラクリを終えているはずなので急がなくては待たせてしまう。そう思った僕は約束の噴水の方向へ足を進めるのだった。


噴水の近くまでたどり着くと、長い水色の髪に青い瞳の美しさ女性がいた。周りの男性プレイヤーもチラチラそちらを見ている。誰が話しかけに行くのか牽制し合っているようだ。


「あの人はいつも周りの視線を集めるな。早く行かないとナンパされそうだ」


そう思った僕は小走りで先輩の元へ向かう。


「お待たせしました。先輩」


「ん、そんな待ってない。名前は……ネージュね。フランス語にしたんだ」


「ええ、英語は安直すぎると思ったんで。そういう先輩は……ああ、やっぱりチャンネル名通りシエルなんですね」


配信をする関係でそうだろうとは予想していたがズバリ的中したようだ。


「ん、そっちのがわかりやすいから」


一通り会話をしてから、改めて先輩を見る。髪や瞳の色は変えているが他のところは現実と変えていないようだ。切れ長な目に整った鼻筋、10人中11人が美人だと評価する容姿をしている。


「いつもの黒髪の先輩もいいですけど、水色の髪も似合ってますね」


「ん、ありがと。あ、ここでは先輩じゃなくてシエルって呼んで」


名前で呼ぶよう要求される。


「分かりました。シエルさんですね」


「呼び捨てでいい」


そのように言われるが年上の人を呼び捨てにするのは憚られるため何とかさん付けを許してもらうと、若干不満気に、


「戦闘中とかは1秒を争うんだからそういう時は呼び捨てにしなさいよ」


と言われた。


「ええ、それはもちろん、分かってます。それにしてもシエルさんも人間族なんですね。てっきり獣人族の狐か、エルフにするものだと思ってました」


ちょっと期待してたんだけどな。もふもふな先輩。


「ああ、説明テキスト読んだら魔法使うならそのどちらかが向いてそうに見えるけど実は罠があってね」


「罠ですか? いったいどんな?」


あの説明にそんなものあっただろうか。不思議に思い尋ねてみると、


「確かに狐族やエルフは魔法の威力が上がったり消費MPが低かったりするんだけど、使える属性が決まってて、狐族の方は火属性だけで、エルフは風属性だけなの」


まさかそんな罠があったとは。このゲームでは魔法は、火•水•風•土•光•闇のよくある6種類がある。まあ、これも種族と同じで隠し属性があるかもしれないが。そんな中で魔法をメインに戦おうとした時に1つの属性しか使えないのは大変不便だ。その属性に耐性を持ったモンスターがいたら突破するのに苦労するし、対人戦でも相手に読まれやすくなる。


「それをテキストに書かないの酷く無いですか?」


運営の悪意を感じてしまう。


「このゲームではよくあること。どうもここの運営は詳しい説明はせずに自分で体験してほしいらしい」


確かに最初から何もかも分かっていても面白くないか。ひとまず納得した僕は先輩とステータスの見せ合いをした。先輩のステータスは


名前:シエル


種族:人間族


性別:女


スキル


火属性魔法lv2


風属性魔法lv2


闇属性魔法lv1


歩行術lv1


錬金術lv1

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