49話 贅沢者
とある昔のお話です。
あるところにひとりの悪魔がおりました。
その悪魔は不思議なことに、魔法が使えませんでした。悪魔は仲間からは馬鹿にされ、自分でも自分のことを『多分自分は落ちこぼれなんだろう』と笑っていました。
けれど、悪魔はちっとも悲しくありませんでした。
悪魔の周りにはたくさんの人間の友達がおりました。
そこには魔法が使えない悪魔のことを馬鹿にする人は誰もいません。悪魔は特別な何かができるわけではありませんでしたが、それでもとても幸せでした。
あるとき、世界に光が降りました。
光は空を焼き、大地を焼き、そこにある全てを焼きました。
人間たちは泣き叫び、逃げ惑いながら一人、また一人と光に照らされて消えていきます。
悪魔はどうしていいのかわからず、空を睨んで泣きながら叫びました。
『やめろ、やめろ。俺から全部を奪う気か。どうして俺の友達を奪うんだ』
『罰を与えるなら役に立たない俺だろう。友達を守ることすらできない俺をどうして残すんだ』
『なにも悪くない友達を殺さないでくれ。俺を一人にしないでくれ』
それでも光は振り続け、それが止んだ頃にはもう、そこには悪魔しか残っていませんでした。
悪魔は生まれて初めてひとりになりました。寂しくて、悲しくて、身体が内側から裂けてしまいそうなほど苦しくて、ずっとひとりで泣きました。
いつしか悪魔は泣くのをやめました。
暗く寂しい黒い森の中、悪魔は今日もひとりきり。
悪魔の傍にはもう誰も居ません。
けれど、光の届かない黒い森、あの時知らなかった冷たさは、今もずっと傍にいます。
『龍狩と喧嘩しなきゃいけないなんて正直聞いてないぜ。こういうのはひいさまとかオジキのが向いてるだろうに』
『向いてないならさっさと倒されてくれるとありがたいのだけど?』
『そういうわけにもいかないのさ』
サロスはふわりと高く飛び上がり、そのまま空中から黒い枝で作られた槍を地上のわたし目掛けて雨のように放つ。あの黒い枝はサロスの身体からも生成されているらしく、竜種が武器として飛ばすウロコや棘に近い使い方ができるらしい。
避けられる枝は避け、どうしても避けられないものは叩き壊す。枝はそれなりの強度があるが、わたしやラフの力で壊せない程のものではない。
『おいおい……一応、本当に殺すつもりの攻撃なんだけどな……』
『余裕そうだけど、空にいるから安全だとか思ってんじゃないでしょうね』
言いつつ、空に浮かぶサロスを睨みつける。サロスは『おっかないお嬢さんだな』とへらへらと笑いながら、先程のものよりも一回り大きい槍を作り出して放つ。大きさを変えた程度でどうにかなると思われたのだとしたら随分なめられたものだと、わたしはその槍を真正面から蹴り砕こうと構える。
『熱くなりやすいほうなのかな、君は』
直後、先程周りに突き刺さった黒い枝から新たな枝が育ち、四方八方から一斉にわたしを狙い一気に伸びる。飛び退いて躱す位置もなく、上に跳んで逃げようにも眼前には巨大な槍が迫っている。
『罠にかけて勝ったつもりかしら』
上から迫る槍に向かって飛び、その槍を足場代わりにして腕を使ってもう一段跳ねた。驚愕するサロスを眼前に捉え、その頭上に脚を振り上げる。
サロスは咄嗟に身体を翼で覆い隠し、そこから黒い枝を生やして身を守ろうとしたようだが、その程度の守りならわたしにとっては存在しないものと然程変わりはない。
『人間をなめるのも大概にすることね』
勢いを緩めることなく、全力で脚を振り下ろす。バキバキという乾いた音を鳴らし、黒い枝を折り砕いてその奥のサロスを捉え、確かな手応えを感じながら脚を振り抜く。
踵落としを喰らわせたサロスはひしゃげた翼の形を直す暇もなく、短い悲鳴と共に地面に叩きつけられる。これだけでは悪魔が死ぬことはないだろうと、土煙に隠れた悪魔の姿に目を凝らしつつ地面へとわたしは自由落下を始める。
ちらりとラフの様子を見れば、向こうは何ら問題ないようで、ラフは元気に黒い枝の怪物を叩きのめして回っている。数はそれなりに多いが、あの様子ならばたいした心配はいらないだろう。
『他人の心配かい?どこまで優しいんだよ君』
サロスの声がわたしに生えた黒い枝から響く。ハッとして視線を土煙へ戻すと、まだサロスの姿は見えていない。しかし、わたしの落下位置に黒い枝が密集し、剣山のようになりながら育っているのが見え、身動きのロクに取れない空中でわたしは咄嗟に身構える。
剣山の先端に脚が届きそうな位置にきた瞬間、剣山の側面を軽く蹴り、身を捩りながら無理矢理横へ飛び退いて串刺しになることを避ける。さすがに無理な体勢がすぎたせいで着地はろくにできずに地面に転がったが、哀れな生け花になるよりは相当マシだろう。
『えぇ……?今の避けるのかよぉ……俺の中の人間のイメージが変わっていくのを感じるぜ……』
ばさりと大きな音と共に、土煙が風に吹き飛ばされる。その中から翼を大きく広げ、ぽりぽりと頭を掻きながら、呆れ混じりの表情でわたしを見るサロスの姿が現れた。
『あんたは見かけ通りに陰険な悪魔らしい攻撃をしてくれるわね』
『弱い奴は頭を使わなくちゃならねえのさ龍狩のお嬢さん。まあ、あんたらみたいな強い奴はそんなこと考えたこともねえか』
『寂しいねえ』とサロスは呟いて溜息を吐く。
悪魔とやりあった経験は、正直なところそれほど多くはない。わたしの普段こなしている仕事の内容的にも悪魔や契約者とかち合う機会が殆どないし、そもそもクリジアがあの数の悪魔と遭遇しているのが少し異様なだけなのだと思う。
ただ、このサロスという悪魔は些か不気味ではあるが、わたしが明確に戦闘を経験したと言えるアモンに比べると相当戦いやすい。あの滅茶苦茶な規模の炎魔法もなく、身体能力ではこちらが上回っている。アモンが異常だったことも重々承知しているが、実際この程度ならば十分すぎる程に希望はある。
『あんたが強いとか弱いとかはどうでもいいけど、さっさとぶちのめさないとこの怪物の群れが暴れ続けるらしいからぶちのめすだけよ』
『そうしないと人間が次々死ぬもんなぁ。そりゃ仕方ないな』
『わかってるなら話が早いわね』
地面を蹴り、サロスとの距離を一気に詰める。サロスが地面に触れ、黒い枝を発生させるよりも速く、目の前まで迫り地面を割る勢いで踏み込む。
『龍喰舞闘・飛燕"
防御のために滑り込ませた翼をぶち抜き、その奥のサロスの顔面を拳で捉える。悪魔は生物と違い、骨を砕くような感触はないが、確実にかかっている拳への抵抗感を感じつつ、その触れているものを一切残さないつもりで拳を振り抜く。
サロスは悲鳴もなく吹き飛び、数回地面を跳ねてから原形を留めていない頭を押さえながら立ちあがった。
『っつぁあ……!人間だったら即死してたんじゃないかこれ……!?』
『悪魔は加減気にしなくて良いから楽ね』
『元人間にも優しいのに俺にはにべもなしかぁ……』
『宣戦布告までしてきた相手に優しさ向ける奴がいると思ってるの?』
『はははっ。それは君の言う通りか』
地面に手を下ろそうとするサロスに対し、黒い枝を生やさせる前に仕留めようとわたしは距離を詰める。この距離なら向こうが何かする前に一撃を喰らわせることができると思い、次は完全に顔面を砕いてやるつもりで蹴りを放つ。
その脚を、地面から生えた黒い枝が貫く。
『なっ……!?』
サロスの手は地面にはついていない。奴の魔法は手で触れた後に枝が発生するはずではと疑問が頭を駆け巡るが、一旦困惑の全てを振り払って脚に突き刺さった枝をへし折りサロスから距離をとる。
『そう驚くなよ。別に手をつかないと魔法が使えないなんて一言も言ってないだろ?』
『……そうね。あんたが陰険な悪魔なことを忘れてたわ』
『悪口に余念がねえなぁ……』
シュンとした様子のサロスは無視して、脚に突き刺さった黒い枝を抜き取る。それなりに痛みはあるが、全く動けないような怪我でもない。
足が吹き飛ばされでもしていたらどうしようもなかったかもしれないが、この程度なら戦闘に支障はない。
『脚がやられちゃ大変だろう?俺は今からでも茶会にしてくれても構わないんだけど』
『あらそう。だったらそのまま何もしないで、黙って殴られてくれない?』
『俺の気遣いは通じないなあ』
サロスの溜息と同時に、サロスの足元から黒い枝がわたしの方へ次々と生え、槍の波のようになって押し寄せる。それを横に飛んで避け、サロスへと走り寄り距離を詰める。
この悪魔の魔法は黒い枝の生成、そしてそれになんらかの要因で取り込まれた者を意のままに操り、変貌させるような効果だろう。枝の有効範囲がかなり広いことも加味して、下手に距離を取るより苦手そうな肉弾戦を仕掛けていった方が安全だ。
頭を砕いてやるつもりで蹴りを放ち、それをサロスが翼で受ける。龍狩の動きに反応ができる時点で近接戦が全くできないわけではないのだろうが、わたしが勝ることはあれど劣ることはない。
『さっき脚貫いたよな!?人間ってそんなすぐ治るんだっけ!?』
『龍狩は丈夫だからってさっき自分で言ってたじゃない』
わたしの脚を受け止めた翼を蹴り払い、蹴り払った脚をそのまま地面に下ろし軸として、サロスの顔面を蹴り上げる。
浮かび上がった身体に勢いをそのまま乗せて拳を叩き込み、地面に叩きつけたサロスの胸ぐらを掴んで引き寄せ、顔面に拳を叩き込んでもう一度地面へ叩き伏せる。
『悪魔はできるだけ派手に壊さなきゃいけないんだったかしら』
サロスの上半身をそのまま叩き潰してやるつもりで踏みつけようとするが、鞭のような尻尾とサロスの身体を覆い隠すように生えた黒い枝で距離を空けさせられた。
『ほんっとにとんでもねえな龍狩……旧時代の遺物にしちゃ暴れすぎだよ』
『旧時代?』
『ああいや、こっちの話。長生きだからさ、俺たち』
身体についた土汚れを手で払いながら、サロスはやれやれと言いたげな様子で溜息を吐いてわたしを見る。
『魔法を捨てた血統とは知ってたけど、それで人間ってこうも強くなるのかい?だったら、魔法なんて最初から持たない方が良かったんじゃない?』
『歴史だとかの話ならわたしは知らないわよ。勉強がしたいなら学校にでもいったらどう?』
『ははは、それは君の言う通り……っ!?』
けらけらと笑うサロスを目掛けて、わたしの後ろから質量の塊のような大鎚が飛び、サロスの翼を薄紙のように引きちぎって地面に墜ちる。その後を追うようにして、この場にそぐわない気の抜けたような声が響いた。
『おぉ~いニムニムぅ。まだ遊んでんの?あーしの方は終わったぜぃ』
『遊んでないわよ。おつかれ』
片手でブイサインをしながら、ラフは満面の笑みでこちらへ歩いてくる。もう片方の手には鎖が握られており、その先端はラフの得物であるあの大鎚に取り付けられているらしい。ちゃりちゃりと小気味の良い音を鳴らしながらわたしの横まで歩いてきたラフが鎖をグイっと引き寄せると、身の丈程もある大鎚がふわりとラフの手元まで戻ってくる。
鎖付きの武器は案外色々とあることは知っているが、身の丈程の大鎚の持ち手に鎖を取り付けて、それだけではなくそれをフレイルか何かのように扱おうと考えるのは世界広しと言えどもこの龍狩の女だけだろう。
『どーよこれ。便利っしょ?』
『よくそんなのやろうと思ったわね……』
『ふふ~ん。ラフお姉さんは賢いからね』
『馬鹿みたいなことやるわねって意味よ今のは』
『そっちの小柄なお嬢さんに同意見だねそりゃ……』
『ヤバ、四面楚歌であーし泣きそう』
軽口を叩くラフを無視して、呆れた様子でこちらを眺めているサロスを見る。ラフに引きちぎられた翼はすでに直っており、悪魔の回復能力の速さと厄介さに思わず顔が歪んだ。
『ていうか、俺の友達ホントにみーんな殺っちまったのか?つくづくとんでもないなぁ龍狩……あれ、小国くらいなら落せる規模のはずだったんだけど』
今のサロスは黒い枝の怪物の群れをラフに壊滅させられ、わたし一人でさえ厄介そうだった龍狩二人に睨まれている。言うならば絶体絶命のような状況だ。少なくとも、余裕を持っていられるような状態ではないのは間違いないはずだ。
しかし、それにしては異常なほどに緊張感がない。
ぽりぽりと頭を掻きながら、一際大きな溜息を吐いてからサロスは一度天を仰ぐ。そのまま背を反って伸びをして、身体を戻す勢いのまま項垂れた。
『まったく……ホントにこっちをひいさまかオジキに任せたかったよ。さすがに俺には荷が重いや……』
項垂れていた頭をゆっくりと上げ、わたし達と再び視線が合う。
『けどまあ、それでもやるしかないか。やるしかないよな。俺、もう寂しい思いなんてしたくねえもんなあ』
瞬間、首を指先でゆっくりとなぞられたような、全身の毛が逆立つような悪寒が走る。
それとほとんど同時に地面がひび割れ、そこから夥しい量の黒い枝が顔を覗かせる。そして、その全てが波打つようにして蠢き、それが巨大な一つの生命体に生えているものだということをわたし達が理解した直後に、地面を砕いて巨獣が姿を現した。
『"
その姿は巨大な黒い蛇。体中に黒い枝を生やし、それが剣山か何かのように触れたものを削りとりながらその身を地上へと引き摺り出していく。そこらの竜種よりも圧倒的に巨大で、小国の城程度なら巻き付いて破壊できてしまいそうな巨体は、蠢く黒い森そのものとでも言うべく歪な姿に似つかわしい歪んだ咆哮で天を衝いた。
その巨獣のあまりのサイズと悍ましい咆哮に、さすがにわたしもラフも身が一瞬竦む。
『この先が寂しくないように、俺はそれだけを願ってるんだ』
『こんなでかいの出るなんて聞いてないんだけどぉ!?』
『わたしだって知らないわよ!!文句言う前に避けなさい!!』
巨獣が地面を抉り取りながら、わたし達が数瞬前まで立っていた位置を呑み込む。いくら頑丈なわたし達といえど、アレに巻き込まれれば無事では済まない。生きていればまだマシな方だろう。幸いなのは動き自体は鈍重で、いかに度を越えた巨躯であっても回避不能の攻撃をかましてくるわけではないことだろうか。
ラフとは左右別々に捌け、無防備に伸びた巨獣の身体を挟み込むようにそれぞれの一撃を浴びせる。
『硬っ……!』
その身に纏っている黒い枝を砕くことはできる。しかし、それが幾重にも重なった身体そのものに攻撃を通すことができない。わたしとラフの全力の一撃でこれならば、少なくとも今のこの状況でこの巨獣を討伐するというのは不可能だろう。
『ニムニム!!本体ぶっ潰そう!!これあーしらでも無理だ!!』
『最初っからそのつもり!!』
ラフと共に巨獣の動きを掻い潜り、その根本であるサロスへと距離を詰める。ラフよりも一歩早くサロスの前に躍り出たわたしは、その薄ら笑いを張り付けたような顔面を吹き飛ばしてやるつもりで蹴りを放つ。
蹴りがサロスを捉える直前、巨獣の身体から黒い枝の怪物が産み落とされ、サロスはそれを盾代わりにしてわたしとの間に滑り込ませた。
『こうすると殺せないんだよな。優しいお嬢さん』
『っちぃ!!』
一瞬躊躇い、蹴りを止めようとした隙に足元から黒い枝がわたしを貫こうと一気に伸びる。咄嗟に飛び退き、衣類をいくらかひっかけた程度で事なきを得た。
『あーしにそれは通用しないぜクソ悪魔』
一歩遅れて、ラフが盾代わりの怪物を一切気にすることなくサロス目掛けて大鎚を振るう。怪物は大鎚の質量の前に為す術なく圧壊され、サロスも避けきることができずに片腕を持っていかれた。
堪らずといった様子で飛び退くサロスに、ラフは振るった大鎚の遠心力を活かし、そのまま大鎚をサロス目掛けて放り投げる。
『逃げんなぁ!!』
風を切ってサロスに迫る大鎚は、サロスに直撃する前に割って入った巨獣の身体に防がれはしたものの、巨獣の身体の黒い枝を粉砕して見せた。
『っち。邪魔なデカブツめ』
『滅茶苦茶すぎるって龍狩め!本当に人間かよ!?』
『泣き言言うくらいなら最初から喧嘩吹っ掛けるのをやめるべきね』
わたしは巨獣の身体を足場代わりにしてサロスまで一気に距離を詰め、空中に逃げられる前にサロスを地面に向けて殴り飛ばして叩き落とした。そのままラフの大鎚を借りて、叩き落としたサロスを目掛けて自由落下の勢いを乗せつつ力任せに大鎚を振り下ろす。
『さっさと壊れろっ!!』
サロスの半身を叩き潰し、そのまま地面を粉々に砕く。今の一撃であわよくば悪魔の核とやらをまとめて叩き壊せればと思っていたが、さすがにそこまでうまくはいかなかったようだ。
グチャグチャになった身体を無理矢理引きずるようにしてサロスはわたしから距離を取り、その隙を埋めるように巨獣が大口を開けてわたしへと突っ込んでくる。
『ニムニムそんままハンマー持ってて~……ねっ!!』
ぐんと身体が引っ張られ、大鎚と共にわたしは宙を舞う。巨獣の大口はわたしが先程まで立っていた場所を呑み込み、巨獣は獲物を喰らえなかった怒りからか、低く唸りながら浮き上がったわたしを赤く不気味に輝く眼で睨みつけた。
大鎚がラフの手元に戻り、わたしはラフの隣に着地する。大鎚だけでも相当な重さのはずだが、人が一人そこにくっついていてもこれだけ正確に引き戻せるものかと若干の呆れ混じりに隣の昔馴染みを見る。
『ふふん、可愛い妹分の一本釣りよぉ』
『今後は漁師でもやったら?メドゥン海域とかで』
『それ竜種まみれの超危険地帯じゃんよぅ……』
『冗談よ。助けてくれてありがと』
得意げな様子のラフを横目に、唸り声をあげる巨獣と形をほぼ直し終えた様子のサロスを見る。悪魔がどれだけ追い詰められていて、あとどれだけ削れば壊れてくれるのかは傍目にはわからないが、サロスの表情からは余裕が少しばかり消えているようにも見える。
『ふぅ……いやぁ、君ら龍狩のことは人間だと思ってたらダメっぽいね……』
サロスは小さな溜息と共に、どこか納得したような様子で言葉を続ける。
『そりゃ奴隷商とかで高値が付くわけだ……。君ら自分でも感じることあるだろ、自分は人間とは違うってさ』
わたし達龍狩がよく言われる言葉。化物だとか、人の形だけをなぞった怪物だとか、恐れと蔑みを込めて、そういった言葉を向けられることは少なくない。それにはわたしも、おそらくラフもいつしか慣れてしまって、そのうち気にも留めなくなった言葉。
人間とわたしは違う。
やたらと世話を焼いてくる奴らとわたしは違う。狩りを生き甲斐とし、衝動のままに生きる獣とわたしは違う。
『痛っ』
隣にいたラフの声ではっと我に返る。
わたし達の身体にも生えていた黒い枝。それが成長し、わたし達の身体を侵食している。
『うわぁキモっ!?なんなんこれ!?』
『っ!?何なのよこの枝は……!!』
身体から生えた枝が伸び、その枝の成長に伴って自分の思考回路にモヤがかかったような、余計なものが流れ込んでくるような感覚が襲ってくる。
一人で彷徨い歩く夜道のような、喧騒の中で取り残されてしまったような、漠然とした不安に囚われるような感覚。
『俺の魔法はさ、黒い枝を出し入れして攻撃する魔法じゃないんだ。枝は副産物みたいなものなんだよ』
サロスの声がサロス本人と黒い枝から直接頭に響いて聞こえてくる。
『ニムニム大丈夫!?ちなみにあーしはめちゃくちゃ気分悪いんだけど』
『なら自分の心配してなさいよバカ!』
思考回路をめちゃくちゃに混ぜられるような、気色の悪い感覚を無理矢理振り払おうとわたしとラフは各々構える。
戦闘の最中に、命のやり取りが行われているこの瞬間に、どうしてこうも心の奥底から寂しさが湧いてくるのか。あの日感じた疎外感を、どこかで感じている孤独を思い出すのか。自分の感情が自分のものではない何かに侵される感覚は強くなっていく。
『俺の魔法は誰もが持っている心の奥底に根を張り、同胞を求めて枝を伸ばす魔法。孤独を喰らって育つ黒い森、その種の媒介者が俺だ』
サロスの声が、思考が頭の中で反響する。その度に寂しさが、孤独感が顔を出す。
『……ちゃんとした挨拶はまだだったね。俺は第十九柱・孤独の祈りの願望機サロス。君たちの心にいつも居る、生涯の友人さ』
声を振り払うように地面を踏み抜いて砕き、無理矢理にサロスを、目の前のまるで友人のように安心感を感じる悪魔にむけて岩盤を投げつける。
岩盤は巨獣の身体に砕かれ、サロスに届くことはなかった。しかし、思考をなんとか晴らすのには十分な一撃だっただろう。なんとか頭の中の違和感を払拭し、眼前の敵へと意識を固める。
『陰気な祈りらしい気色の悪い魔法の説明どうも……!』
巨獣の身体を掻い潜り、サロスをめがけて蹴りを放つ。しかし、蹴りは黒い枝に拒まれサロスまでは届かない。
サロスは優しげな、まるで親から逸れた子を見守るような目でわたしを見る。その目に安心感を覚えてしまう自分の心がより一層気色が悪い。
『そう言うなよ、俺は君にも寄り添っていたいと本当に思ってるんだ』
『遠慮するわ。わたしは一人の方が好きなのよ』
『強がるなって。誰だって嫌だろう?寂しいのはさ』
寂しいのは嫌だ。
それは、そうかもしれない。
黒い枝が足元から伸びるが、反応が一瞬遅れる。皮膚をいくらか切り裂かれながら、慌てて飛び退くが、その先に巨獣の尾が降ってくる。
『実際同情するよ。君たち、今の時代の人間とも散々違うと言われたんだろう?特別な呼び方をされて、差別されて、物珍しい何かのように扱われてさ』
巨獣の尾に潰されるのは避けたが、受け身を取れるような避け方はできず、振り下ろされた巨大な質量の塊の衝撃と共に吹き飛ばされ、地面を転がる。
『分け合える家族はいたかい?友達は?自分の周りにそんなもの、本当はいないと感じたことがあるだろう?』
悪魔の声が脳内で反響する。
家族、家族はいた。わたしには不釣り合いな程に優しい両親がいた。守られていた。それに気がつけなかったから、わたしを守ろうとした母が死んだ。父に顔を合わせられなくなった。
きっと何も気にしていない様子で、わたしが悪いわけではないと父は言う。そうどこかで期待している自分も嫌で、どうしようもなくなって逃げた。
目の前に黒い枝が波のように迫り、湧き上がる思い出と後悔を振り払って慌てて躱す。
『……だったら何?あんたがわたしの穴を埋めてくれるとでも言うつもり?』
『その役が俺かはわからない。でも、黒い森にはみんな一緒にいる。寂しさを導に集った奴が、同じ傷を持った奴がさ。ほら、帰ろう。ソニム・ネイロス』
『っ……!気安く、呼ぶな!!』
心地の良い声が響く。それがあまりにも薄気味が悪い。まだ違和感や忌避感を感じられているから良いが、おそらくはこれに全く悪感情を抱かなくなった末路が黒い枝の怪物達だ。
『ラフ!!動ける!?センチになってる暇ないわよ!!』
『任せろ〜……って言いたいとこだけど、ごめん。あーし長くは保たないかもだわぁ……』
弱々しいラフの声に少しばかり驚いて振り向くと、ラフは辛うじて武器は握れているがボロボロと涙を流して泣いている。怪我や苦痛からくる涙ではなく、悲しさからくる涙であろうその泣き方にわたしは驚愕と怖気を覚えた。
『頭ではさ、頭ではわかってんのよもちろん。けどヤバい、寂しい寂しいってわけわかんないくらい泣けてくる。ウケるっしょ』
『ウケねえのよこのバカ!!戦えなくなる前になんとかするわよ!!』
『ははは、ニムニムの手厳しさも今は愛おしく思えるぜぃ……頑張るっきゃないねぇ』
ラフは気力だけでどうにかしているといった様子でなんとか武器を構える。その姿は今までのラフからは想像できないほどに弱々しい。
寂しい、悲しいという感情が、過去の様々な思い出を引っ張ってきては叫び、それに寄り添う優しい声が頭に響く。サロスがまるで古くからの友人や家族かのように、安心感のある存在に見えてくる。魔法の効果が薄いはずの龍狩にこれ程まで作用するのだから、普通の人間などひとたまりもなかったのだろう。
『心配しなくても一緒に居るよ。世界が終わるその時まで、君たちがもう寂しいと感じないように』
『頼んでないのよクソ悪魔』
距離を詰め、サロスに向けて蹴りを放つ。サロスは蹴りをふわりと後方に跳ねて躱し、黒い枝の槍を数本作り出してわたしへと放った。
放たれた槍のうちの一本を掴み、サロスへ向けて投げ返す。槍はサロスの翼を貫いたが、さほど大きな傷にはならなかった。
『今はもう保たないよ。それでも最後に独りってのは悲しいだろ。もういいんだ。この先でいつか、俺たちがこんな悲しい最後が来ないようにするからさ』
『それ以上喋んのやめてもらおっかなぁ!』
ラフが大鎚を振い、サロスへと振り下ろす。しかし、側から見ても明らかに一撃のキレが悪い。案の定、ラフの一撃は空を切り、地面を砕いただけで終わってしまう。
『ほら、強がってても仕方ないぜ。君、もう限界だろう?』
『うっさいんだよ!人の頭ん中で知ったような口で喋ってんな!!』
ラフがほとんど怒り任せに追撃を振い、サロスがそれをふわりと避ける。わたしは自分にサロスの注意が向いていない隙間を縫ってサロスとの距離を詰め、拳を数発叩き込む。
ラフはその場でふらついてしまい、もう殆どまともに動ける状態ではなそうだ。
『っ……!!むしろ、君はなんで動けてるのかが不思議なんだけどな俺は……!』
『動かなきゃ死ぬでしょうが』
『それで動けるような代物じゃないはずなんだよ』
サロスに数発追撃を入れ、地面に殴り伏せようと少し大きく振りかぶった隙に、サロスの尻尾に足を絡め取られ放り投げられる。
宙に放り出されたわたしに、巨獣が大口を開けて迫る。確実にわたしを丸呑みにすることができる軌道。丸呑みならどうにか生き残るかもしれないが、噛み潰されれば確実に死ぬ。
『ソニム!!掴んで!!』
声とほとんど同時に、視界の外から鎖が伸びてくる。わたしがそれを掴むと同時に、地面へ向けてろくな加減もないままに引き寄せられる。
普段通りなら文句の十や二十吐いていたが、涙をぼろぼろと流し、異様な様子で荒い呼吸を繰り返すラフを見て、流石に文句を垂れる気にはならなかった。
『くっそ……!!あーもう!ごめんねソニム、こんなとこ見せたいわけじゃないんだけどさぁ!』
『気にしなくていいわ別に。助かったわよ、ありがと』
『ソニムは大丈夫?あたしさ、多分もうダメだ。ずっと寂しいとか悲しいとか、気にしないようにしてたことが頭を埋め尽くしてる』
『あんた、優しい分そういうの効くんでしょ』
口調が真面目な時の口調になっているあたり、ラフはもう本当に余裕がないのだろう。
身体に生えた黒い枝はなおも成長を続けており、わたし達を呑み込もうと枝を伸ばし続けている。誰もが心のどこかに持っているような孤独を糧に、それ以外の思考を全て塗りつぶすように枝を伸ばすこの黒い樹に抗える人間はおそらくいない。
どんな人間にも誰とも分かり合えない寂しさを感じる瞬間は存在する。その理由も誰にも理解されないし、誰からも共感されないものであることの方が多いだろう。もし誰かが同じような心の影を持っていて寄り添ってくれたとしても、それを理解者だと思えるかはまた別の話になる。わたし達は孤独からは逃げられない。だからせめて、同じ寂しさを持った誰かを求めて枝を伸ばす。
『独りのままじゃあ俺たちは立っていられない。だから、せめて手を取り合うくらいはしよう。なにもおかしなことじゃない。君たちは確かに普通の人間より強いかもしれないけど、それが独りのままでいい理由にはならないだろ』
龍狩と、いつしか名前ではなくそう呼ばれることに違和感も持たなくなっていた。人間とは違うもので、悪魔でもなくて、魔物からも人間からも恐れられる捕食者。そういう記号で見られることの方が増えて、他の何者とも自分は違うのだと心のどこかに引っかかる思いを見て見ぬふりをしてきた。
『俺も散々寂しい思いをした。誰だってこんなもの味わいたくないんだ。君たちのその感情は間違いじゃない。寂しいのは苦しいし、独りは寂しい。それが当たり前なんだよ』
メキメキと音を立てて黒い枝が育っていく。
心に根を張り、無数に分かれた枝が温もりや光を遮っていく。黒い森の中にいるような、冷たく寂しい孤独が心を埋め尽くしていく。
同じ寂しさを持つ者同士、寄り添いあってこのまま最後を迎えるのも悪くないのかもしれない。そんな思いが自分でも恐ろしい程に次々と湧き上がってくる。
『独りは、寂しいかもね』
脱力し、ふらふらとサロスの方へと歩を進める。
ラフはもうほとんど自分の意識は呑み込まれてしまっている状態のようで、黒い枝に身体が半分以上侵されている。ここに来るまでにも何体も見かけた黒い枝の怪物、それとほとんど変わりない姿になってしまっている。
身を委ねれば楽になる。寂しさなど感じない、黒い森の一部になってしまえばそれで解放される。そんな考えが次々と浮かんでは脳内で反響する。
『さあ、手を取り合おう。最後のその時まで、決して寂しくないように。俺たちは一緒にいるから』
差し伸べられた手に吸い寄せられるようにふらふらと歩き、ゆっくりと手を伸ばす。
サロスの声が、微笑みが、その全てが求めていたもののように感じる。このままいけばわたしはもう苦しまなくていい。わけもわからずに零れる涙も忘れられる。
そう思いながら、伸ばした手とは逆の手を握りしめ、サロスの顔面を殴り抜く。
完全に意識外の一撃だったらしく、一切の準備も警戒もなしに振り抜かれたわたしの拳にサロスは抵抗することもなくそのまま吹き飛び地面を転がる。
『っな……!?あり得ない……!!いくら君が気丈でも、もう本当に耐えられるような状態じゃないはずだろ!!』
『そうね、そうでしょうね。あの時のまんま独りだったらもうホントに参ってたとこよ……!』
ぐちゃぐちゃになって砕け散りそうな心を引き摺りながら、動揺で未だに動けていないサロスへと距離を詰める。迫ってくるわたしを見てから、はっとしたように飛んで逃げようとしたサロスの尻尾を掴み、力任せに地面へと引き摺り落とす。
そのまま自分へとサロスを引き寄せ、数発殴りつけ、ラフの大鎚に付いている鎖を巻き付けてから胴体に風穴を空けてやるつもりで蹴りを入れて再び吹き飛ばす。
『逃がさない』
遥か彼方に吹き飛ぼうとする悪魔を、鎖を引いて無理矢理近くに引き戻し、追撃を喰らわせるためにと再び拳を構える。
『がっ……あ……!ヨルムガンドっ!!』
サロスの声に弾かれたように巨獣が動きだし、サロス諸共わたしを喰らおうと大口を開く。
その瞬間、巨獣の顎が強制的に閉じられ、その衝撃で顎と牙が砕け散った。あまりにも突然の光景にわたしとサロスの驚愕が重なる。
『ふぅううー……、うぇ、あぁ。あーーー!もう無理!もうだめだ!!あと頼んだよソニムぅ!!よっろしくぅ!!』
それを吹き飛ばすように、黒い枝に呑み込まれかけているラフが、倒れ伏す巨獣の返り血を派手に浴びながら叫んだ。巨獣の下顎にめり込んだ大鎚を引き抜く気力はもはやないようで、言葉通りに限界の一撃だったのだろう。
巨獣は絶命こそしていないものの、少しの間はまともに動くのは難しそうだ。あの大鎚で頭部をあれほどの威力でかち上げられれば当たり前だろうが、こいつが動けない間にあとはわたしがやるしかない。
『くそっ!なんで動ける!?何がそこまで君たちを……!!』
『……これはあいつらには絶対に言ってあげないけど』
完全に自分の間合いの中に捉えきったサロスに連撃を浴びせながら、今自分を突き動かしているものに思いを馳せる。
わたしは人と関わるのはあまり得意じゃない。それに、わたしは母を死なせた酷い娘だ。誰かと関わって、大切になったとしてもそれを守ることができる自信がない。だから人と関わることをやめようとした。一人だって好きだったし、困らないと思っていた。というより、実際困ったことはあまりないはずだった。
『寂しいっていうのは認めるわ。あんたの言うこともわかるし、わたしももうおかしくなりそうよ』
だというのに、頼んでもないのに世話を焼いてくる奴がいる。寄るなと言っているのに引っ付いてくる奴がいる。怖くて、責任から逃げて、何もかもから目を背けたわたしなんかを信頼してくれる奴がいる。一人でいるのは自分を守りたかったからで、多少寂しいと感じるのは仕方がないことだと思っていたのに。
わたしの周りには気が付けばいつも誰かが居て、その温かさにずっと助けられていて、大切なものなんてもう二度と持ちたくないと思っていたはずなのに、いつしか今の居場所が笑ってしまうくらい大切になっていた。
『寂しいなんて思う暇ないくらいの馬鹿共に囲まれてんのよ、わたしはねっ!!』
サロスを全力で蹴り上げ、宙に放り出されたサロスをわたしは跳んで追い越し、片足を天高く振り上げて眼下の悪魔を見据える。
狙うのは、胸部に見えた異様な輝きを放つ悪魔の心臓部である核。
『だから孤独なんて感じる暇はないって?はははっ、なんだよ、それ……』
『龍喰舞闘・天龍八武……』
刹那、サロスと目が合う。
『贅沢者め』
その顔には悔しさでも憎しみでもなく、自嘲するような、どこか寂しそうな笑みが浮かんでいた。
『"
全身全霊の力を込めた一撃はサロスの核を捉え、その威力の全てを乗せてそのまま地面へと落下する。地面が砕け散り、わたしはサロスからろくに離れることもできずにふらついて座り込む。
砕けた地面の中心からサロスは起き上がる様子を見せない。そのまま暫くの間、異様な緊張感に包まれた沈黙が流れる。わたしももうこれ以上動くのは不可能だ。あれでサロスがまだ無事ならば、わたし達にもう打つ手はない。膝をついて祈っているような感覚のまま、永遠にも思える時間が過ぎた後、静寂を静かに破る音がした。
『……俺にも、あったんだ。君の持ってるものみたいな、宝物がさ』
『まだ……!』
『世界ってやつと戦ってる、そのつもりだった……けど、俺は……逃げてただけかもなぁ』
サロスの声はするが、起き上がってくる様子はない。
その声はまるで友人に思いを語るような優しくも真剣な声色で、先程までとはまた違う妙な親近感が感じられる。
『俺、俺さ……寂しかったんだよ。もうどうしようもなかった。だからいつかを夢見てた。けど、人間は強いなあ。俺なんかよりずっと強いよ。君たちみたいに、今から目を背けないでいるべきだったのかもね』
地面に倒れたままのサロスの身体が徐々に崩れていく。わたし達の身体の黒い枝も、巨獣の姿も、サロスの身体の崩壊に併せてボロボロと崩れはじめた。
『はははっ、今更遅いよな。そう、そうだ。俺はいつも遅いんだ。……悪いなぁオジキ、ひいさま。俺、今に今更期待してみるよ』
サロスが崩れかけている身体を無理矢理に起こし、わたしを見る。
黒い森は枯れ果て、突き抜けるような蒼天から陽の光がわたし達を照らしている。
『さようなら、
慈しむような暖かい笑みを残して、冷たかった孤独は消えていった。
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