「第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部」二十首連作
葉名月 乃夜
君だけ
雑草を 拾い集めた 花束を
無邪気に抱える 君に微笑む
「おはよう」と 太陽みたいに 笑う君に
会うため今日も 寝坊を装う
「行かないで」 そんな言葉を 言えぬまま
夕日に背いて 君に手を振る
家を出て いつもみたいに 右向くが
挨拶向ける 相手はおらず
顔上げて 隣の席を 盗み見も
可憐な横顔 どこにも見えず
白壁に 同化しそうな 横顔に
込み上げる涙 君は苦笑い
顔を上げ 夏空を指で 切り取って
キャンパスを手に 君の元行く
「素敵ね」と ページを捲る 細い手に
手を重ねれば 温もり伝わる
背を壁に 白ずくめたちと 目があって
揺らぐ心を 隠せるはずなく
「連れてって」 君の言葉に 真夜中の
街を二つの 影が駆けてく
濃紺の 漣前に 立ち尽くし
流れる涙は 波に攫われ
花々に 囲まれ眠る 君の顔
2度と見れない 僕を映す目
薄暗い 天井眺め 何日目か
君の魂 この世に在らず
君と見た 最期の浜辺に やってきて
留めておいた 「好きだ」を叫ぶ
久々に 腕を通した ブレザーで
引いた隣の 机には花瓶
白かった キャンパスに作る 夏景色
本当なら君と 見たかった色
真っ青の 端に綴った 黒線は
生きてた君が 遺した言葉
気がつけば 頰に流れる 涙あり
書かれた文字が ぼやけ滲み出す
キャンパスを 持って病室の ドア開く
君がいた場所に そろそろ戸締り
波の音 合わせて筆を 動かして
生まれた海の絵は 天国の君へ
「第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部」二十首連作 葉名月 乃夜 @noya7825
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