九雨 「執事の思い」

"ゴトッ.....˛ཬ˛ཬ˛ཬ˛ཬ˛ཬ˛ཬ "


「(┈┈┈┈…これで、皆様に最上の安心と、


  '気遣い'を提供できます..... !)」


狭く、おそらく古代の王族がこの場所にいた名残なのか....


朽ちた亜麻色の壁に囲まれた石室の中で、目の前の一段と高くなった


石の台座の上に置かれた石棺(せきひつ)を開けると、叶生野家の執事、近藤は


その柩の中にそっと手を差し入れ、満面の笑みを浮かべる____________


「(ファラオの鏡像....! この、石室の中に隠されているとは


  聞き及んでおりましたが....!


  無事、下賜(かし)させて、頂きました.....!)」


【You, wait,! Where are you going with that,!

(お前、待て....! それ持って、どこ、へ.....っ、!)】


"ゴゴゴゴッ!


「!」


"しまった"


【Pharaoh, Oh, no, such a, You, !?

(ファラオ....っ ! それ、そんな、持って..... っ!?)】


"ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ.....


「(も、もしや___________ こ、これは、


  "王族のお叱り"を買ってしまった様だ.....っ!?


 —————ハイッ!」


"ビシュウウゥウウゥッ!?」


「シュウゥォォオオンッ!?」


「(—————— .....!


石室の中が突然激しく動き出した事に、手にしていたウィップを


新体操選手の様に天井の下にある棒の様な場所に引っ掛けると、


目の前の落とし穴の床を、その棒を支点にして手にしたウィップを巧みに使い


近藤は老獪(ろうかい)な猿(ましら)の様にその穴を飛び越える!


「…┈┈┈快適な、環境....っ '安心'した暮らしを


 叶生野の皆さま....っ! そして、'彼の国'に提供するまで˛˛˛˛˛˛ !


 この私、執事、近藤は、'止まる'訳には行かないのです.....っ!」


"ビュンッ 


     ビュンッ!"


「スタッ!」


「(かなり深い穴でした....!)


 !?」


"シュルルルッ!?」


「ほ、 ゴぼぉ....っ!?」


"ズンッ!!"


ウィップを使い、石室から穴を飛び越えた思った近藤が、


安い調子で飛び越えた穴を見下ろしながらほくそ笑んでいると


"溝落ち"


とつぜん、溝落に激しい激痛が走り、近藤はうずくまりながら


思わず後ろへ振り返る....!


【Let your guard down,! Your gurd, !?

(油断するな....! 油断、....っ !?)】


「ちょ、....! そ、それ....ッ!」


"ガッ!"


後ろに振り返ると、そこに別の男_____________


しかもどうやら自分と同じ日本人の執事では無く、


どこか別の国の..... '外人の執事'が、穏やかな落ち着いた表情で


近藤の溝落ちに入れた拳を真っ新(まっさら)なハンカチーフで拭いながら、


へたり込んでいる近藤を見下ろす....!


「ChapterI-IV- IX, Part VII-II of the Butler's Charter,


 proviso A butler must always behave in a calm, gentlemanly


 and stouthearted manner, ! Remember, Condo?

(執事憲章第ⅡⅣⅨ章、ⅦⅡ部のⅡⅠ、但し書き______________


 「執事たる者、常に冷静紳士かつ、気丈に


  振舞わなければならない.....!」


 忘れたか、'コンドウ'よ____________??)」


「(わ、忘れてました.....っ )」


うずくまりながら


【The mirror image of Pharaoh that you have


 obtained in these forgotten ruin will be


 taken by me, Isaac Avanagh, to present to my master.

(お前がこの'忘れられた遺跡'で手にした、ファラオの鏡像は、


 この私┈┈┈┈… アイザック・アバナーがご主人様へと


 差し出すため、持って行く事になりますᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ  !)】


「W, wait,

(ま、待てぇ....っ)」


「No need to worry about calculation.

(—————打算の気遣い無用。)」


"タッ タッ タッ タッ タッ.....!


「(C, calculation, My care is calculation,)

(だ、打算ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ  ! わ、私の'気遣い'が、


 '打算'だと___________ ??)」


去っていく男の後姿を見ながら


「(ゆ、夕食とᱹ ᱹ ᱹ ᱹ ᱹ  ちょ、朝食....っ 


  ちょ、朝食の買い出しを....っ 済ませねば....ッ)」


「Pathetic,

(  哀れな.....)」


「(———————、 !


近藤は、今日の叶生野家での食事の買い出しの事を考えていた.....


「(ゆ、夕方には間に合わせないと.....っ !)」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る