4 二大政党確立 自然党と福祉党


 認知症は進行する病だ。認知症患者たちは介護ロボットの補助により、最初は何とか社会生活と仕事をこなしていた。しかし、病気の進行と加齢により、だんだん自律行動が不可能となり、やがてあらゆることを介護ロボットが代行するようになっていった。採決や決済など意思決定に関わる重要な仕事も、介護ロボットが代行する割合が増えて行った。このような行為は、法律違反であり、当初は批判も多く、問題視された。しかし、圧倒的な数の認知症患者を抱える子の世界は、それ以外に社会が回る方法は無かった。法整備の外にもあり、結局黙認され、普通のこととなっていった。


 結果、社会と政界はより明確に二つに分断された。20%の異常な健常者の支持する自然党と80%の正常な認知症患者の支持する福祉党だ。社会の生産そして税収入の大部分を自然党支持者が担い、その果実のほぼすべてを福祉党支持者が税支出として消費する構造となっていった。多くの労働をロボットが行う時代ではあるが、生産人口となる健常者の少なさから経済は常に綱渡り状態であった。

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