戦いの後1
ぽたっ・・・
「ん、んんぅ・・・」
冷たい液体が頬に落ちて、意識が戻った。
身体に力が入らない。どこだここ。
頭が何か柔らかい物の上に乗せられているようだ。
なんの枕だろう?なかなか良い寝心地だ。
ええと、何してたんだっけ・・・
だいとうばつをして・・・ごはん、食べ損ねて・・・そしてあの地獄が・・・
「ハッ!!」
そこで記憶が濁流のように流れ出す。
そうだ、俺はまた気絶していたんだ。
ドーイさん、そしてタスク!!アイツだけは!!
そうして俺は目を開く。
「━━━━━へ・・・?」
目の前にあったのは双丘だった。
大きすぎて持ち主の顔が見えないほどのとても大きな双丘。要するに、巨乳だ。
と、言うことは枕だと思っていたこれは太ももか。
身体の疲労感も相まって、どこまでも沈んでいくような柔らかい太ももの心地よさにもうちょっとこのままでいいかと思った所で双丘の間からひょこっと顔が見えた。
「起きたっ!って、大変!実験した液体が顔に付いちゃってる!」
それは知らないお姉さんだった。
「━━━━そんなことが・・・とにかく、助けてくれてありがとうございます」
結論から言うと、このお姉さんが超高度から落下した俺を助けてくれた人だったようだ。
彼女が俺の頬に付いた謎の液体を拭きながら話す。
「そうよぉ〜。私がいなかったら死んでたんだから感謝してねぇ〜」
このおっとりとしたお姉さんの名前はシズクさんと言うらしい。名前の通り、水の魔術を扱えるそうだ。
俺の事も魔術で操った水で受け止めてくれたらしい。
話を聞いていくと何やら普段は冒険者ではなく研究者をしているようだった。俺と同じように『大討伐』にはE級冒険者として参加したようだ。
研究者というのは本当らしく、俺を膝枕している今もガラスで出来たビンに入った液体を熱心に観察している。
周りを見ると、何やら大きな声が聞こえる。その方向を向くと、木に貼り付けにされた人が冒険者たちに怒号を浴びせられながら殴られていた。
「うわぁ・・・なんですかあれ」
「あれ?あれはねぇ〜、『竜牙』の置いていかれちゃった人たち!!主力の術士3人が逃げちゃったから、どうする事もできずに捕まっちゃった可哀想な人たちだよ〜」
そうか、
そう思ってしまった自分が怖くなる。だが、あいつらは己の行動によって私刑を受けているのだから文字通り自業自得だろう。
俺は目を逸らした。
「それで、なんで僕に膝枕を?」
嫌な物を見て嫌な気分になったから、無理矢理に話題を変えた。
俺は知らないお姉さんに膝枕してもらうような心当たりが無い。だから思いきって聞いてみるのだ。
「それはぁ〜・・・なんでだと思う?」
逆に聞き返された。俺に当てろというのか。
「えーと、みんなを助けたから・・・?」
「キミがしたのはそれだもんねぇ〜。でもそれじゃ40点です」
「じゃあ、俺のおかげで解毒剤を回収出来たから?」
「ぶぶぅ〜、それじゃあ点はあげられません!遠くなっちゃったわ〜」
うーん、思いつかない。
解毒剤・・・あ!!ちょっと待て!!
「俺!
「それなら大丈夫よぉ〜。うちのスライム君に胃袋の洗浄してもらったもの。でもでも、毒は無かったようなのよ?」
「あっ、そうだ。俺、シチュー食ってないんだった」
俺のシチュー、トカゲもどきに食われたんだった。
あの時は何も考えずに行動したが、もしシチューを食っていたら動き出す前に既に倒れていたかもしれない。
そう考えると代わりに毒のシチューを食べてくれたあのトカゲもどきに感謝するべき・・・か?
あとスライムに胃の洗浄をしてもらったとかいう物騒なワードが聞こえてきたが聞こえなかったことにしておく。
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