単眼鬼の集落
森の中を進む俺たち一行。
配置は先頭にセバス、真ん中にアリミナとセレクタ、そして最後尾に俺という具合だ。
真ん中の2人は、「迷子にならないように私と手を繋ぐのだわ!」とアリミナがセレクタの手を繋いでくれており横並びに歩いている。
髪の色も顔も全然違う2人だが、こうしていると姉妹のように見えるな。そう思いながら改めて2人を見る。
アリミナはクリーム色の髪をしていて、白い肌の上にはきらきらと緑の瞳が輝く光のような少女だ。
そして話によると、どうやら『ゴドラゴ帝国』の第三王女らしい。
最初はその身分通り礼儀正しい高貴な人というお堅い印象だったが、話していくうちに変な語尾が付くようになったり、気さくにこちらに話しかけてきたりとだんだん年相応の一面を見せるようになった。こちらが信用され始めているという事なんだろうか?
特に色恋沙汰が好きなようで俺とセレクタがちょっと触れ合っただけですぐにピンク色の妄想をし始める節がある。あの目で見られるとこっちまで恥ずかしくなってくるから、正直やめて欲しい。
セレクタは日本人であれば馴染みのある真っ黒の髪にチョコレートのような濃い褐色の肌をしている少女だ。
そして何より目を引くのが何処までも吸い込まれていきそうなほどに黒い、瞳孔の開いたその瞳である。
初めてその瞳を目にした瞬間、催眠にかかったように彼女に引き寄せられていってしまったのは忘れられない。
アリミナは年相応の一面を見せる事はあれ、芯の部分ではしっかりとしている。しかし、セレクタは基本的に等身大の人形のように無表情、無反応であり、何を考えているのか分からない不思議な娘だ。
今のところ俺にだけは口を利いてくれているがそれはそれで問題で、会ったばかりの俺にやたら接触を求めてきたりと距離感がおかしい所が目立つのが気がかりだ。
気掛かりと言えば、セレクタは不可抗力とは言え半ば誘拐のような形でここにいるらしい。だからいつかは彼女の親も見つけないといけない。セレクタの話によるとおそらくまともな親ではないが、筋は通さないといけないだろう。
「うーん、どうしたもんかねぇ」
「どうしたのだわ?」
「いやいや、ちょっと考え事。気にしないで」
ふーん?と不思議そうにこちらを見るアリミナ。
こら、歩きながら後ろ向かない。危ないよ。
その時、突然セバスが立ち止まりこちらに止まれと合図を送った。
「ちっ、ここから先に
ええっ、昨日の寝床からは大分歩いたけど。だとしてもまたサイクロプスの集落があるのか。その時、ロゼアさんがあの最後の晩餐の直後に言っていた事を思い出す。
『
それを思い出していると、セバスが選択を迫ってきた。
「どうする?見つからないように進むか、大きく迂回するか」
ロゼアさんの話によると、いろんな所に単眼鬼の集落はあるみたいだから迂回した所でまた別の集落があったという事になりかねない。
「見つからないように突っ切りましょう。迂回して別の集落に当たる可能性もないと言い切れませんし、それにまだ『これ』があります」
そう言って皮袋の中から丸い玉、『
「あの光る玉か、それがあるなら心強い。それならばこのまま進もう」
ずしん...ずしん...
そうしてサイクロプスの集落へとやってきた。
正直、もうこの足音は聞きたくなかったが仕方ない。
集落といっても簡単なもので、開けた場所に葉っぱを敷き詰めてベッドを作っているだけだった。
周りには多少折られてこそいるが、木が普通に生えておりこれに隠れながら進めば大丈夫そうだ。
ずしん...ずしん...
大きな足音が鳴る中、アリミナがこちらに視線で「怖いのだわ・・・」と語りかけてくる。そういや初めて会った時サイクロプス見て気絶してたよね、君。
思ったより順調に前へ進める。これは大丈夫なのでは。そう思った瞬間何かにつまづき━━━━
「あいたっ!!」
バキバキバキィィ!!
「「「グオオオオオオォォォォォォォ!!」」」
あ、やっちゃった・・・
「みんな逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
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