この娘だれ?
「━━━━━お前ら目ぇ閉じろ!!『
よかった・・・間に合った・・・
そして狩りの初日にロゼアさんから貰った『
真正面からその光を見た
「こっちだ!!」
サイクロプス達が正気に戻って視界を回復させる前に逃げないと。3人に声をかけ、森の奥へと走る。
「ここまで来たら大丈夫だろう」
これで
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
両肩に2人の少女を抱えながら息をあげている人物。息が切れているのに話しかけるのは酷だろう。
「人物」と言っているのは、この人物が遠目からでは男性か女性か見分けがつかなかったからだ。
短髪で細身の体に、整った顔立ち。爽やかな王子様みたいだという印象を受けた。バラを片手に白馬に乗っている絵が頭に浮かぶ。
まずい。間近で見てもどっちか分からん。面と向かって聞くのは失礼だよなぁ・・・
その時、彼、または彼女の体のある部分が目に入った。それは女性ならば存在しているはずの膨らみ。胸だ。
胸が一切無いし流石に男か。男だな、よし。
そう考えているといつの間にか息を整えていた彼がこちらをじっと見ていた。
━━━━ッ!!初対面の人物の身体を不躾に眺めてしまっていることに気づいた俺は、慌てて視線を逸らす。同性であってもこれは不味いだろう。
それを気づいているのかいないのか、彼が口を開いた。
「助太刀、感謝する。貴方の助けが無ければ私たちはここで終わっていただろう」
「いやいや、困った時はお互い様ですよ」
凛々しく、芯の通った声で感謝を告げられる。
感謝されるようなことではない。俺は最初、彼らを見捨てようとしていたのだ。
「ふふっ、貴方はいい人だな。私はセバスチャン。貴方の名前は?」
「俺の名前は城崎玖郎って言います」
「シロサキクロウ・・・貴方に何か対価となる物を渡すことが出来たら良かったのだが、生憎今の私たちにはこの助けに見合うほどの価値のあるものを持っていない。この森を抜けてからでも良いだろうか?」
「対価なんてとんでもない!それよりもあなた達はどうしてこんな危険な森に?見たところそこの2人は戦えないように見えますが・・・」
セバスチャンの横に寝かせられた2人の少女を見る。
1人は透き通るような肌にとても整った顔立ち、そして金髪の少女。
そしてもう1人は同じくとても整った顔立ちをしているが、肌の色は対照的に濃い褐色であり髪の色が俺にとって馴染みのある黒色をしていた。
「確かに、情報は時として金となる。それならば私は可能な範囲であればなんでも答えよう。まずこの森に入った理由だが、私達は訳あって国から逃げてきたんだ。逃げて間も無く、追手が送られてきた。追手を躱すには私たちはこの森に入るしかなかったのさ」
対価として聞きたかった訳じゃないんだが、セバスチャンが質問に答える。
国から2人の少女を連れて逃げてきたのか。一体どんな出来事があったのだろうか。というか、何処の国だろう。
「そうだったんですか・・・あなた達はどこの国から?」
言いたくないことを聞いてしまったのだろうか。少し考えるそぶりをした後、決心した様子のセバスチャンが口を開いた。
「・・・・・・可能な限り答えると言ってしまった手前、誤魔化せないな。『ゴドラゴ帝国』だ」
なにっ━━━!?ゴドラゴ帝国!?ロゼアさんを殺した国じゃないか!!
あいつらに復讐してやろうと思っていた矢先にこれは大きい。森から出られたらロゼアさんを殺した奴らの情報をたっぷり聞こうじゃないか。
「そして此方に居られるのはゴドラゴ帝国第3王女で在らせられるアリミナ様だ」
「ええっ!?王女様!?それならなんで国から逃げることに?」
お、王女さま!?ゴドラゴ帝国の!?
確かによく見るとアリミナと呼ばれた金髪の少女はとても高価そうなドレスを着ている。泥や砂でボロボロで様々な部分が無惨にも千切れており気づかなかった。
「すまない、これは話すととても長くなってしまう。森を抜けてから安全な場所で話そう」
申し訳なさそうにセバスチャンが言う。するとちょうど彼女。アリミナと呼ばれた金髪の少女が目を覚ました。
「ん・・・んぅ・・・ここはどこ?セバスは?セバス、どこなの?」
「お嬢様、私はここにおります。ひとまず危機は脱しました。ご安心ください」
セバスチャンが優しく語りかける。彼の瞳はまるで娘を見る親のように穏やかだ。
「よかった・・・それで、そこにいるのはどなたなの?」
「彼はシロサキ・クロウ様、彼が私たちを助けてくださったのです」
「あら、そうだったの!救っていただき、心より感謝します」
ぺこりとこちらに向けてお礼をするアリミナ。
体が小さくも、確かな気品のようなものを感じる。
ふと、甘い匂いが鼻に届いた。後ろから?俺は後ろを振り向くと━━━━
「━━━━うわあっ!!」
うわっ!!びっくりした!!いつの間にか起きていた黒髪の少女が俺の背後に立っていた。
「はは、びっくりしたよ・・・君の名前は?」
聞くが、黒髪の少女はじっと真顔でこちらを眺めている。
静寂。彼女が口を開くのを待ち、俺は視線を少女の目に向ける。光が一切ない黒色の瞳だ。
よく見ると、変な事に気がついた。瞳孔が開いており焦点が定まっていない気がする。そして正面から見つめあっているはずなのに、目が合っていない感覚がする。この娘は本当に俺を見ているのか?
静寂を破ったのはセバスチャンだった。
「申し訳ない、彼女は言葉を話さないんだ。何を言っても反応が無く・・・話せないのかもしれない。そして重ねて申し訳ない、私たちも彼女の名前を知らないんだ」
「えっ?それはどういうことですか?」
「帝国から逃げ出す際に馬を拝借したのですが、その際にいつの間にかお嬢様の後ろへと乗っていたのです」
「それは違うわ。一緒に行きたそうにしていたから乗せてあげたのよ」
「と、お嬢様は言っておられるのですが・・・馬は大人の助けなく馬に乗れるものではありません。そもそも身長が足りませんから。私は馬に乗せていないはずなのです。そうして気づいたらかなり進んでしまっていて・・・戻る訳にも置いていく訳にもいかずここまで連れてきてしまったという訳です」
え、怖いんだけど。誰よ、この娘。
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