出発
あの襲撃からかれこれ1週間が経過した。
ついに今日俺はこの森を抜ける。
ここを出る前に今一度、確認ついでにこの1週間で起こったことを思い返そう。
ロゼアさんの死後、俺は彼女の墓を作った。彼女の遺品を家の横に埋め、折れた大剣の柄を墓標とした簡単な墓だ。
墓なんて作ったこともないし作り方も知らない。更には彼女の遺体はどういう訳か光の粒になって消えてしまった以上、これが墓と呼べるものかどうかは分からないがこうでもしないと俺自身が立ち直れなかったのだ。詰まるところは自己満足だろう。
「まあ、こういうのは気持ちが大事だよね」
自分に納得させるため、そう呟く。
次は彼女から貰った鍵だ。
彼女のプライバシーを気にして各部屋の詳細を終ぞ聞くことはなかったため、鍵の使い所から探すことになって無駄に時間を浪費したというのはここだけの話。
結果として、これは部屋の鍵ではなくリビングルームにあった大きな箱の鍵だった。絶対部屋の鍵だと思うじゃん、普通。
箱を開けると、使い道の分からない様々な道具の他に明らかに目を引く物がある。
「これは!お金と地図だ!!」
外から見るだけで硬貨が入っていると分かるほど膨らんでいる袋を覗くと、金銀銅の3種類の硬貨がごちゃごちゃになって入れられていた。
知らない人物が精巧に彫られており、そして全く同じものが何十枚もある事からおそらく観賞用のコインではなくきちんと市場で使えるお金のはずだ。
俺は髭の人物が彫刻されているそれを一枚手に取りながらそう考える。
続いて地図だ。丸められて筒状になっていたそれは広げると大陸の地形と国が大まかに纏められていた。
あの憎き『ゴドラゴ帝国』の起こしている戦争のせいで国の領土は変わっているかもしれないが、あるのとないのとでは大違いだ。
俺はロゼアさんに感謝を捧げてから、その二つを腰巾着に入れた。
最後に、『ゴドラゴ帝国』の奴らが逃げた時に俺が放った黒い弾丸のことについてだ。
結果としては、何も分からなかった。
その後色々試してみたが何も起こらなかったのだ。
最初は適当な的へ向けてあの黒い弾丸をもう一度放とうとしてみた。しかし、何も起こらなかった。
的をあの白髪の男だと思ってみたり、あの時の怒りを思い出してみたり、技に痛い名前をつけて叫んでみたりしたが、一向に何も起きる気配はなかった。
「しかも結局あいつらが通ってった穴に撃っちゃったからどうなったか分かんないんだよなぁ・・・」
本当になんだったんだ、あれ。
こういう経緯があり、俺が撃てた魔法(?)については一旦保留だ。
「と、まあこんな感じか。色々あったなぁ」
回想を終えた俺は予め纏めてあった持ち物の確認をする。
「食料よし、武器よし、荷物よし!それじゃあ、行ってきます!!」
そしてお世話になったこの家に別れを告げ、目的の地へ歩き出す。
「それじゃあ、目標はワルドローザ王国!!向かう先は東!!━━━━━━ってあれ?」
しかし、出だし早々そこでとんでもない事実に気がついてしまう。
「━━━━向きが!分からねぇぇ!!」
東ってどっちだよ!!しかもこの辺ずっと森だから
これじゃあ地図なんてあっても意味ねぇじゃん!
「せめて磁石でもあったらよかったのになぁ・・・こんな事ならもうちょっと天体の勉強でもしとくんだったかな・・・・・・」
まさに後悔先に立たず。
こうなったら仕方ない。俺は地面に落ちていた丁度良い枝を拾うと、そのまま地面に立てる。方向は天に決めてもらおう。
カランッ
「よし、こっちに進むか。森から出られたら誰かにきちんと聞こう」
全く締まらない中、そうして俺の物語が始まった━━━━━
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます