なんてこった
「ん・・・うぅ・・・」
目を開けると知らない壁が目に入る。俺はベッドで寝かされているらしい。本来なら慌てるところかもしれないが、一度死に瀕したからか、はたまたそんな気力すらも残っていないのか。
少しの間何もせずぼーっとする。すると徐々に脳が覚醒していった。
俺は、助かったのか?手足を見ると、ぐるぐると布で巻かれている。誰かが治療してくれたようだ。周りを見渡すと、1人の大きな人が椅子に座っていた。
それは老婆だった。
しかし老婆と形容するにはあり得ない身長とガタイの良さをしており、寿命という言葉とは程遠い力強さを感じられた。皺のある顔と胸を見なければ、老婆だと気づけなかっただろう。
老婆はこちらが目を覚ました事に気づくと、口を開いた。
「縺顔岼隕壹a縺九>縲ゅ≠繧薙◆縲√←縺薙?莠コ縺?縺?シ」
まずい、日本人ではないようだ。何を言っているかの前に何語かすら見当もつかない。
こちらの顔を見て察したのか、一瞬キョトンとした表情を見せたがすぐに何かを思いついたようで、
「縺セ縺溽渚縺励>險?隱槭r隧ア縺吶h縺?□縺ュ縲∬ィ?闡臥浹縺ッ縺ゥ縺薙↓縺励∪縺」縺ヲ縺溘°?・?・?・」
と未知の言語で呟くと部屋から出て行き、部屋には俺1人となった。
部屋を眺めると、大きめの窓から日差しが差し込んでいる。今ならあそこから逃げ出せそうだ。
「いや、ないない。一回助けてもらったし。悪い人じゃないと思う。それに逃げてもまたあのオオカミみたいなのにやられるだろ」
そんなことを考えていると、間もなく老婆があくびをしながら部屋に戻ってきた。老婆は、
「縺サ繧峨?∬ィ?闡臥浹縺?繧」
と言うと手に持った小さな袋をこちらに軽く投げ渡した。
皮でできた小さな巾着だ。それを開けると、中には綺麗な硝子玉のようなものが4つ入っていた。これをどうすれば良いのだろうか。一つを手に取り、まじまじと見つめる。
その様子を見た老婆が、
「鬩壹>縺溘?∬ィ?闡臥浹繧堤衍繧峨↑縺??縺九>縲」
と言うと口に入れるジェスチャーをした。
見た目とジェスチャー通りなら飴みたいな物だろうか?とりあえず一つ、口に入れてみる。
すると、瞬時に玉は消え口の中には甘い香りが広がった。
「消えた?不思議な食べ物だけど、味は完全に飴のブドウ味だな。あ、こっちはイチゴ味だ。こっちはレモン。最後はコーヒーか」
口に入れた瞬間に玉が消えるため、すぐに4つとも消費してしまった。全て食べたのを見届けた老婆が口を開く。
「どうだい、わかるかい?」
━━━━!?これまで意味不明だった老婆の言葉が、突然鮮明に聞こえた。
「な━━━なんで・・・言葉が、わかる・・・?」
「なんでって、そりゃあ言石を食べたからだよ。これを使うとそれぞれに刻印された言語を理解できるようになるんだよ。知らないのかい?」
なんだそれは。ありえない。そんなものがあるなら学校で苦労して英語を学ぶ必要なんてないじゃないか。
「そんな魔法みたいなこと、有り得るのか・・・?」
「なぁに言ってるんだい?魔法ならあるじゃないか、あんた一体何処から来たんだい?」
魔法が・・・ある?それこそ有り得ない。それじゃあ俺は御伽話やSFの世界に来てしまったとでも言うのか。だがしかし、先ほど食べた飴で老婆の言葉がわかるようになるという体験が魔法の存在を嫌でも証明している。
嫌な予感がする。という言葉すら今の状況を楽観視している表現だろう。
最早それだけの確信を抱えながらも、全部思い過ごしだという最後の希望を胸に疑問を口にする。
「ここは・・・どこだ?」
老婆が怪訝な顔をしつつも口を開こうとする。
辞めろ、辞めてくれ、言わないでくれ。
矛盾した叫びが心の中でこだまする中、声が届く。
「あたしの質問は無視かい、まあいいよ。ここは『帰らずの森』さ。位置的にはソルティア共和国とワルドローザ王国の間だね。どうだい、お望みの答えだったかい?」
その言葉に絶望する。聞いたのは俺だが、知りなくなかった。
ああ、やはりそうか。
なんてこった、どうやら俺は異世界に転移してしまったらしい。
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