第2話 どす黒い悪霊
「里音、いよいよ明日、依頼が来るんだよね?頑張ってね」
「遊んだ後に言うセリフじゃないでしょ」
そんな会話をしながら愛と別れた。私は悪霊退治屋の娘、西園寺里音。悪霊退治屋は、悪霊退治を請負う家の事。そして、今は帰っている途中。
しばらく歩いて家に帰ってきた。そしたら、兄が出迎えていた。否、出待ちしていた。
「おかえり、里音。友達との遊び楽しかったかい?」
「兄貴、なんで玄関前にお玉持ってきているの?」
「お兄ちゃんって呼んでよー、小さい頃の里音みたいにさー」
「兄貴って呼ぶだけありがたいと思って。名前で呼び捨てされてないだけ」
「冷たいなー。これも俺が霊感が無いのがわるいのか……?」
「兄貴の場合、構いすぎ。自覚して」
「はっ!もしや悪い男に引っかかっていないだろうな?!お兄ちゃんは許しませんよ!」
「兄貴、そんな人はいないし、ウザイ」
兄の秀明。見ての通りシスコンだ。正直、普段の兄はまともなのだが、私と接している時はシスコンを発動する。そのせいで私は兄の事が苦手だ。
「妹にウザイって言われた……。死のう」
「ちょ、ちょっと待ってよ兄貴、料理していたんじゃないの?」
「そうだった。今日は里音の大好きな豚のステーキだよ」
「生姜焼きでしょ。何豚のステーキってオシャレに言ってんのよ」
「妹の当たりが強いなぁ……。俺、なんかしたっけ?」
「色々」
「そんな……」
「それより兄貴、明日の依頼ってどんな感じなんだ?」
「なんか、医薬品が効かないで肩こりが酷いらしいよ。典型的な悪霊のパターンだね」
「そうだな。だとしたら、すぐ解決出来そうな気がするな」
そして、翌日。依頼者が来た。私達はすぐ退治できるだろうと思っていたが、意外な事にどす黒い悪霊が依頼者にまとわりついていた。
「依頼者の花巻さんですか?」
「はい。私が花巻悠大です」
「あなたに取り憑いている悪霊、どす黒いですが何かありましたか?」
「どす黒い?普通じゃないんですか?」
「はい。悪霊は普通紫色からやや黒に近い灰色ですけど、あなたの場合、漆黒を通り越してどす黒いです。見た感じは、守護霊もいなさそうですね……?」
「え?守護霊がいないんですか?」
「うーん……。もしかしたら、守護霊が悪霊に負けたのかもしれません。そういうことだったら、ちょっとまっててください」
「はい」
数分後。私は倉庫から置物を取り出した。
「あの、この置物は?」
「この置物に悪霊を入れて、守護霊に変えます。私、こういうの得意なんですよね」
「そんな事ができるんですか」
「はい。じゃあ、そろそろはじめますね」
そして、私は悪霊を封じ込め、守護霊に変えた。すると、その守護霊は力が強い証拠であるオーラを満遍なく出していた。
「ありがとうな。実は孫に取り憑いていた悪霊を退治しようとしたが、返り討ちにされてのお。代わりに悪霊の養分にされる所だったが、嬢ちゃんが助けてくれてのお。ありがとう、嬢ちゃん」
「えっ?爺ちゃんが守護霊だったの?」
「そうみたいですね。では、解決したので、私はこれで」
「ありがとう。……今度、会ったらお茶しない?」
「今度会ったら……。まあ、その時はいいかもしれませんね」
悪霊を退治したので、依頼金をもらい、帰ってもらった。かっこいい人だったので、最後のお茶のくだりは行きたかったが、やめた。また今度会うことはないだろうし、いいかと思う返答をした。しかし、もし今度会ったらお茶くらいはする。そう思って、私は家の中に入った。
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