第4話
方法はこうだ。
まず、『聖剣』を根源魔法で魔力に変換し、その魔力を使って俺が魔術陣を展開し、元の世界へ転移する。
ただし、魔力の量的におそらく転移可能なのは俺一人だ。
「……好きにすればいいんじゃない?」
「……サン」
俺の考えに気付いたのか、サンがそういった。こちらに背を向けていて、表情は確認できない。
怖くて、確認することもできなかった。
「あんたはこの世界に無理矢理連れてこられたんだから……帰る手段があるのならば、それを使う権利もあると思うよ。……好きな人がいるんでしょ?」
「…………」
そうだ。俺には、誰よりも会いたい人がいる。
俺はぐっと聖剣を握りしめる。
ただ……
「クソッタレが」
俺は短く毒づき、地面に手を触れる。
「魔術陣……展開」
俺が呟くと同時に、巨大な魔術陣が地面に展開される。大体、俺たちが召喚された部屋くらいの大きさの地面が、複雑な紋様と文字で埋め尽くされている。
「わっ」
「なにこれ!?」
勇者パーティの面々が驚きの声をあげる。
「リア、アリステル。魔術陣に魔力を込めてくれ」
「……わかった」
「かしこまりました」
リアとアリステルが魔力を込めると、魔術陣が一際強く輝く。
「……世界よ、贄たる魔力を対価に、我が求めに応えよ」
魔術の補助のために詠唱を行うと、少し揺らいでいた三人分の魔力が安定して魔術陣を循環し始める。
発動、成功だ。
「……あんた、もしや」
サンが何かつぶやくが、俺に気にしている余裕はない。
「……根源足る力を以て、価値あるものを純然たる力に変えん」
サラサラと聖剣が粉になり、魔術陣へと落ちていく。
一気に魔力の制御が難しくなる。俺は絡まった糸をほぐすようにして魔力の流れを制御し、魔術を発動させる。
「GYUAAAAAAA!」
と、魔王がひときわ大きく吠え、こちらへと向かってくる。俺がいまからすることが、明らかに魔王の脅威となると認識したのだろう。
「止めます……え!?」
聖女の展開した結界があっけなく破られる。あまりにも強大な攻撃に耐えられなかったようだ。
「……問題ない。……結界、発動」
俺は聖剣から流出したエネルギーを使用して結果を張る。
「止めます……!」
アイリスがビームで魔王を灼く。
魔王は構わずに俺の張った結界を破ってこようとするが、無駄だ。
「……異なる世界より、時の枷を以て、我が求むる人を呼び出せ!」
魔術陣が一際強く輝くと、空へと大きな光の柱が伸びる。
全員が固唾を飲んで見守る中……光の柱から、三人の人が現れた。
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