第3話
突撃してきた勇者を、魔王はあっさりと迎撃し、その体に口を近づける。
「ちっ」
アイリスが舌打ちをして白いビームを放つが、運悪く勇者を守ろうとして貼られた『聖女』の結界と干渉する。
結果として、アイリスのビームは結界と相殺された。
「うわああああ!」
ぞふり。
間抜けな声をあげる勇者の体を、魔王が喰らう。
からんからん……と虚しい音を立てて聖剣が『勇者』の手から落ちた。
「UGYUAAAAAAAAA!」
魔王が歓喜の叫び声をあげ、ぐぐぐっとその体を縮小させていく。
アイリスがビームでその体を焼くが、もう時既に遅し。
魔王の巨体は人2人分ほどの大きさへとなり、一度大きな繭のよう物を作る。
そして、繭が解け……現れたのは、赤黒い人型の魔物だった。
意外なほどに細身ではあるものの、内部で抑えきれないほどのエネルギーが熱となって周囲を焼いている。
背中からは無数の触手を生やし、そしてその頭上にはさながら天使のヘイローのように、リングを戴いている。
まさに『魔王』といった風貌だ。
「GYAOOOOOOOOOOOOOON!」
ゴジラもかくやという咆哮が、周囲をビリビリと震わせる。
「…………全員一箇所に固まれ!聖女、守護者、全力で守れ!」
初めて聞く、アイリスの命令口調。全員の背筋が伸びて、一斉に俺のところへと集まってくる。
「祝福せよ……!」
「守る!」
「太陽の光よ!」
「……時よ巡れ」
全員がそれぞれの防御手段を発動させた直後。
ピカリ、と魔王が輝き、そして一拍遅れてドンという音がなった。
結界によって
「国が…………!」
アリステルの悲痛な声。
地平線の彼方まで、ひたすらガラス状の地面が広がっている。まさしく、不毛な地だ。
「何が……起こったの?」
「……魔王の……全方位攻撃だ。以前の魔王も一度だけ使った……威力は桁違いに低かったが……」
アラタが信じたくないとでもいいように歯切れ悪くそう言った。
「黒白反転」
アイリスが周囲に数百の魔力の球を浮かべ、それぞれに膨大な魔力を込める。
「奥義・空」
……あれはダメだ。
俺の直感が残酷にもそう告げる。
……あれで魔王を倒すことがは決してできない。
「どうすれば……」
俺は高速で思考を回す。そして、ガラス状の自然できらりと一際輝く物に目が留まった。
「……魔術:テレキネシス」
俺はそれを魔術で引き寄せ、ぐっと握る。
魔王の攻撃を受けても、全く傷一つない剣……勇者の聖剣。
とてつもない力を感じるが、おそらく資格が必要なのだろう。俺には……いや、勇者以外の誰にも全く扱える気がしない。
「……どうにかできないか?」
俺は思考を超高速で回転させる。
そして……俺は気づいてしまった。
これが……この聖剣が、俺が元の世界へ帰れる手段にであることに。
そして、これがおそらく二度とない機会であることに。
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