第7話

まったりとした、退廃的な時を過ごすこと一週間。

特に何かが見つかるわけでもなく、図書館の本をひたすらに読む時間が続いた。


そして、タイムリミットがついに訪れた。


「なんか騒がしいな……」


本のページをぱらぱらとめくりながら、呑気にそう呟く俺の頭をサンがはたく。


「何言ってるの。革命よ、革命」

「……ついにか」


俺は立ち上がり、みんなを呼び寄せようとして……もう俺のそばに全員集合していることに気が付いた。


「よう」


と、しゅたっと上からアラタがやってくる。

手には刀を持っていて、臨戦態勢だ。


「全員集まっているか。いよいよ革命の時だぜ」

「どうするんだ?王女様の保護に動くのか?」

「あー、それなんだがな……」


アラタは頭をぽりぽりとと掻く。


「どうも王女様は、王国と運命を共にする気らしいぜ」


王国と運命を共にする……というと、つまり?

いまいちピンと来てない俺に、アラタは続けて言う。


「王女様はここを動かず、ただ革命の行く末を眺める気らしい」

「……十中八九、処刑されますよね?」


革命の行く末は、城下町と城を見れば大体わかる。


俺の脳裏に18世紀のヨーロッパで起きた市民革命が浮かぶ。

旧権力側の人間は、残らず処刑されていたような気がする。


「……処刑で済めばいいですが」


アイリスが皮肉気にそういった。


「それから、もう一つ問題がある」

「……なんですか?」

「勇者がこの革命にかかわっている。それも、革命軍に加わるという形でな」


ええ……


俺は素で引いてしまった。

なぜ勇者がこんなところに?

ひょっとして、横暴な政治に苦しむ誰かの声を聴いて、正義感にかられでもしたのか?


勇者がこういうシチュエーションで動くという前例を作ってしまうだけで、あまりよくないと思うのだが。


「どうする?」

「……王女様は、俺たちにどうしろと?」

「どうしても構わない……戦っても構わないし、逃げても構わない、だとさ」


逃げても構わない……か。

どうするべきだろうか?


俺はひとしきり悩み、一つの結論を出した。


「……ひとまず、王女様を説得しよう」

「本気かしら?」

「ああ。なんとなく、そうした方がいい気がする」


疑う目を向けてくるサンとアイリス。リアは事態の推移にあまり興味がないようで、本を読み始めてしまっている。


「俺の母親曰く、「直感には従うべき」だ」

「……まあ、否定できないことはありませんが」

「というわけで、早速行くことにしよう」

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