第3話

俺たちは『剣聖』に連れられ、王城へと来ていた。革命を恐れてのものか、王城だけ異様に警備が厳重だ。

あちこちで衛兵が目を光らせていて、なかなか息が詰まる。


尤も、城内はあまり手入れされているとは言い難い。所々に綿埃すら舞っている有様だ。


その歪みが、そのままこの国の歪みを象徴しているように見えた。


「こっちだ」


『剣聖』––––アラタはいわゆる「顔パス」らしく、咎める者は誰もいない。そして、白の上部のある部屋の前まで来た。


そして、トントンとドアをノックする。


「どうぞ」


と、女性の落ち着いた声が部屋から聞こえてきた。

かちゃりと『剣聖』がドアを開くと、一人のメイドが俺たちを出迎える。


「アラタ様。そちらの方は一体?」

「ああ、俺の古い友人と……その仲間だ。王女様に話がある」

「……かしこまりました。では、そちらでお待ちください」


そう言ってソファを示される。

座って待っていると、ドレスにティアラといったまさに王女様といった出立ちの少女が奥の部屋からやってきた。王女様––––アラタによれば、アリステルという名前らしい––––だ。


「ようこそいらっしゃいました、アラタ様。して、お話とは?」

「士官したいってよ、こいつらが」

「……なるほど」


王女は俺たちを値踏みするようにじっと見る。

俺たちが順番に自己紹介をすると、王女はふむ、とうなずいた。


「確かに、実力はありそうです。……ですが、そうですね。さすがに縁もゆかりもないものを雇用するのは無理があります。なので、客兵という形で城にいていただく、というのはいかがですか?」

「構いません。それで、報酬の話なのですが」

「ふふ。王城の図書館に入りたい……もしくは、宝物庫の何かをご所望ですか?」


俺は驚く。なぜこちらの思惑を?


「この傾いた国に士官を望みたいというのですから、それ以外に考えられませんよ。王城の図書館については、禁書庫も含めてすべて閲覧して構いません。宝物庫に関しては残念ながら無理ですが」

「ありがとうございます、十分です」


俺は頭を下げる。


「タリヤ、客兵の方々を図書館に案内しなさい。私はここでしばらく手紙を書いていますので」


王女はメイドにそう命令すると立ち上がり、足早に奥の部屋へと帰っていく。どうやら、かなり忙しいようだ。


「手紙……か。どこへ送る気か聞いているか?」


と、アラタがメイドのタリヤへと問いかける。


「いえ。ですが、おそらくは地方の貴族をいさめるものだと思われます」

「……そうか」


どこか諦めをにじませるアラタ。

もうこの国はもたない……この国に入ってから幾度となく感じた感覚がまた俺を襲った。

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