第1話
「そんで、どうしたんだ?『魔女』。昔話を語りに来たってぇわけではないだろ?」
「ええ。あなたの『剣聖』としての力……次元切断を求めてのことです」
「なるほどな」
老人は頷くと、俺をジロジロとみる。
「帰りたいってわけか。好きな女子でもいるのか?ん?」
「ああ。大切な人がいる」
「かかっ。いいねえ、若いってのは。だが、俺にゃあ無理だ。そもそも次元切断はそこまで万能ではない……任意の世界とこの世界を繋げられるわけじゃあない。せいぜいが傷を作る程度だ。それに……『全てを断ち切る剣』はもう俺の元にねえよ」
なるほど……流石にそこまで甘くないか。
「だが、手がかりはある。この国は腐っても古い。古今東西、あらゆる情報とモノの集積点だった……過去には、勇者召喚すらされたことにもあるほどに、な」
「……なるほど。王城を襲って革命を起こしつつ、書物や宝物を漁ろうと言うことですか」
老人はギョッとしたような目で、とんでも無いことを言い出すアイリスを見る。
「お前さん……ちょっと合わないうちに、考えが物騒になったな。いや昔からそうだったか?」
「も、もちろん冗談ですよ?」
「……どうだか。冒険してた頃、むかついたから国を三つ滅ぼしたの、俺は忘れてないからな」
そんなことしてたのか。
俺とサン、リアのアイリスへの視線が畏怖のそれになる。
「もう90年以上前のことじゃないですか!」
「俺たちにとっちゃまだ90年前だよ。この前勇者と会った時も、その話題で盛り上がったぞ」
「でも、あっちが悪いですから……」
アイリスは言い訳をするが、すればするほどドツボにはまっていっている。
あれ?ていうか、100年前一緒に冒険していたということは……
「アイリスって、昔の勇者パーティの一因だったのか?」
「ええ」
なるほど……アイリスの強さにも納得である。
「ごほん。話を戻していいか?」
「あ、すみません」
「この国に、改革派の––––この腐った国を変えようとしている王女がいる。話が通じる、まともなやつだ。そいつと繋がって、助ける代わりに王城の図書館へ出入りさせてもらえ」
そんな王女様がいるのか。
下手をすれば……いや、下手をしなくても命の危険があるだろうに、よく王女の立場で改革を実行しようとするものだ。
おそらく『剣聖』が抑止力となることによって、暗殺を防いでいるのだろう。
尤も、改革自体は、このギルドや国境警備の惨状を見る限り、成果は上がってないようだが……
「……もう潰したほうが早くないですか?」
アイリスはそう言ってくるくると白い魔力の球を弄ぶ。先ほどの国を三つ潰したという衝撃の事実と結びついて、かなり恐怖を覚える光景だった。
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