グレガリア王国

プロローグ

一ヶ月の旅の末、俺たちはグレガリア王国の王都『グランソル』へとたどり着いた。俺とリア、そしてサンはそれぞれ位階が四に上昇した。

この世界で猛者と呼ばれるまでに力を高めることができたのだ。


……まあ、アイリスがいなければそんなリスキーなことはできなかったのだが。


王都は他の都市と同じように壁で囲われていた。……それはいいのだが、なんだかボロボロで、手入れが行き届いていないのが見て取れる。


反対に、都市の中心にある城はどこもピカピカに整備されていた。そのアンバランスさが、既にこの王国の歪みを象徴しているような気がする。


「小さい都市だし、すぐに見つかるかな?」


王都グランソルは、区画整理された小さめの都市で、2階などを活用することでスペースを確保しているらしい。


「既にいなくなっている可能性もあるけど」


確かに、一ヶ月も立てばどこかへ移動している可能性も全然ある。


「……いえ、それはありませんね」

「……アイリス?」


思わず振り返るが、アイリスはそれ以上何も言わずにスタスタと前を歩く。俺は不思議に思いつつも、アイリスに続いてグランソルの門を潜る。


門番は詰所で酒盛りをしていて、出入りする者をチェックすることすらしていなかった。


「……もう終わりね、この国は」


サンは醒めた目でそれを見ていた。

通りには反対に、目をギラギラとさせた警備隊の隊員と思われる人間が歩いていた。


目をつけられないようにとでも言うのか、通りの店は一切客引きをせず、道路からは見えない場所にいる。


アイリスはそれを気にする様子もなく、通りをずんずんと進んでいく。そして、迷いなく冒険者ギルドへと入った。


冒険者ギルドには活気がゼロだった。職員も少なく、みんなダラダラとしている。


そのまま、四階へと進む。確か冒険者ギルドの三階は事務スペースになっていて、四階には高ランク冒険者のための施設があるんだったか。


お世辞にも綺麗とは言えない階段を登り、一番手前のドアをガチャリと開く。


、『剣聖』」


そうアイリスが挨拶をしたのは、小柄な老人だった。使い込まれた刀を抱えていて、のんべんだらりと過ごしている。


「おう、『魔女』じゃねえか。んでそっちは……」


老人は目を細めると、刀を腰にやり抜刀術の構えをとる。俺は反射的に前へ出て『心装』を展開し、同じ構えをとる。


老人は踏み込むと、刀を抜き放つ。すると、刀の緋色に光り輝く。そして、同じように抜刀術を放った俺の刀身を、あっさりと切り裂いた。


「……ぐっ」


体を両断したような痛みに耐える。


「……ふむ。悪くはない。だが……迷いがあるな。同郷の者よ」

「……同郷」

「おう。悠久の勇者の仲間、『悠久の剣聖』とは俺のことよ」


そういうと老人はニヤリと笑った。

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