第11話 エンジェル到着
「ついたわね」
「ああ」
ゴブリンどもを焼き払ってから四日後。俺たちは、リアの母親が住まうという都市『エンジェル』へとやってきていた。
手配は回っていないようで、賄賂を使う必要もなく都市へ入ることができた。
そのまま手近なレストランへと入店し、個室へと入る。
魔術『静寂』を起動しつつ、俺はリアに問いかけた。
「……それでリア、お母さんは都市のどこにいるんだ?」
エンジェルはテッタほどでは無いにしろ大きな都市で、流石にゼロから見つけるのはだいぶ厳しい。そう考えて、リアに聞いたのだが……
「知らない」
即答である。しかし、その目が若干泳いでいた。どうやら嘘をつくことにはあまり慣れていないようだ。
「本当は知ってるんだろ?」
俺はじっと目を見て問いかける。よく俺が綾華にされた尋問方法である。
しばしの間リアは目を彷徨わせ、やがてぷいっと横を向いた。
「……知らない」
絶対何か知ってはいそうだが、決して口を割らないリア。そういえば、テッタで「あの女」なんてふうに読んでいた記憶がある。
あまり折り合いが悪くは無いのかもしれない……あるいは、俺たちと別れることを怖がっているのかもしれない。
俺は彼女を安心させるべく、言葉を紡ぐ。
「……リア。心配するな。リアが俺たちと一緒にいたいと思う限り、俺はお前と一緒にいると約束する」
「…………」
しかし、リアは何も答えなかった。
サンがやれやれという風に首を振る。アイリスはどうしていいか分からず、困った様子だった。
「……まあ、明日までに言ってくれればいい。でなければ、このまま都市を出ちゃおう」
「…………いいの?」
リアが驚いたようにそう言った。
「良くはないが……悪くはない」
カバネに説明だけしておけば、問題はないだろう。サンは甘いわね、というような顔つきになる。俺はそれを無視して、運ばれてきた料理に集中する。
この世界では一般的な、シチューにパンという食事だ。久しぶりのまともな食事に、リアとサンの顔が輝く。
「とりあえず、食べたらギルドへ向かおう。カバネが情報を送ってくれているはずだ」
そう言ったが、二人は聞いてすらいなかった。アイリスは微笑ましそうな顔になると、優雅に食事を摂りはじめた。
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