第10話 太陽と時間
太陽は赤赤と燃え盛り、あたりを眩しく照らす。制御が難しいのか、サンの額に脂汗が浮かんでいる。
下では、ゴブリンどもがボーッと火の玉に魅入っている。
「……焼け!」
サンの命令に応えるように、火球は一際輝きを増すと、地上へと落下していく。
そして、地面と触れた瞬間。
どうっという鈍い音を立てて、火球が爆発した。あたり一面が炎に包まれ、粉塵が撒き散らされる。
サンの体がふらつくが、アイリスに支えられていた。
「……リア、大丈夫か?」
リアは悲鳴こそあげていないが、若干強めに頭にしがみついてくる。流石に、若干怖かったようだ。
「……生き残り」
と、ロアが指さす。そこには緑ではなく黄色のゴブリンが、全身に火傷を負いながらもなんとか生きながらえていた。
周囲には、盾にしたらしき仲間の死体がある。
「……時魔法」
というつぶやきが聞こえた瞬間。
何かがズレたような感覚がしたのち、ベリベリベリ!とゴブリンが上から下へと真っ二つになった。
「……リ、リアさん?」
「……私の力を使っただけ」
属性:時間……根源、次元と並んで希少属性中の希少属性である。なるほど、これがリアの力なのか。
そりゃ権力者や組織が追いかけるわけである。
「……そうか」
俺の目的……異世界への渡航にリアの力がどう作用するかは未知数だが……今はひとまず、リアの成長を見守ることにしよう。
「……他に生き残りはいないようですよ」
と、アイリス。
「……ありがとう、アイリス。サンは……位階上がったか?」
「うん。一気に三になった!」
サンはそう言うと笑顔を作った。ゴブリンの巣を一人で壊滅させたことと、今までの蓄積によって位階が一気に上昇したようだ。
「魔法の制御はまだ全然だけど、位階は上がったから威力は十倍以上に跳ね上がるよ」
「できれば、制御の方を先になんとかしてほしいかな」
背中から飛んでくる火に焼き尽くされるのはごめんである。
「さ、エンジェルにいきましょ」
「そうですね」
アイリスはそう言うと、地面へと飛び降りる。俺も追随して飛び降りると、地面がガラス化していてガシャリという音が鳴った。
Tips 属性:太陽
希少属性で最強の属性の一つである。戦場をたった一人で一変させる力があり、歴史上、数々の戦いを太陽属性の使い手が覆してきた。現在、属性:太陽の保有者はほぼ全員が太陽教団を結成し、組織や権力からの自衛を行っている––––『魔法論』より一部抜粋
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