第7話 赤い集団

「……なんか、やけに物々しいな」


朝起きて宿屋の窓から街を見ると、そこかしこを衛兵がうろついていた。衛兵は眠そうに目をこすりながら、何かを探しているようである。


「何かあったのかしらね?」


サンはしゅたっとスタイリッシュにベッドから降りると、寝巻き姿のまま俺の隣まで来て窓の外を覗き込む。

なかなかの薄着だが、特に気にする様子はない。


「……他人事のように言ってますが……おそらく探しているのは私たちだと思いますよ?」


後ろからアイリスの呆れたように言った。

振り返ると、アイリスはうーっと伸びをしていた。美しい長い白髪が、朝日に照らされて幻想的に輝いている。


俺の視線に気づくと、アイリスは恥ずかしそうに縮こまって布団で体を隠した。


「……あっ」


と、サンが短い悲鳴を上げて窓から飛び退く。

サンの視線の方向では、真っ赤な髪に揃いの赤い装束を身につけた異様な集団が街、を練り歩き、鋭い視線で何かを探していた。


「……太陽教団、か」

「……そうよ。全く……諦めという物を知らないんだから


サンがうんざりといった様子でそう答える。


「……太陽教団が衛兵まで動員しているのか?」

「いえ。衛兵が探しているのは私でしょう。情報ギルドの顧客には、国や都市も含まれますから」


と、アイリスが俺の疑問に答える。

なるほど。昨日の騒ぎが––––あの店に店員や他の客はいなかったような気もするが––––どこかかた伝わったのだろう。


「……一刻も早く出発した方が良さそうだな」

「……ええ」


次の目的地は、リアの母親がいるという都市「エンジェル」である。もう出発の準備はできているし、食事を摂ったらすぐに出発するとしよう。


「……じゃあ、着替えるから、窓閉めて、あっち向いてて。ついでにリアを起こして」

「……ここで着替えるのか?」

「他にどこで着替えろってのよ」


えーっと。

部屋は広いがこの一室しかない。他に着替えるスペースは皆無だ。

かといって、誰かがここから離れるのはそれはそれで大問題である。


暗殺ギルドや情報ギルドが襲撃してきた場合、俺一人では対処できない。


「ほら、さっさとする」

「…………」


俺は黙って窓を閉めて、自分が寝ていたベッドへと戻る。そしてすやすやと心地良さそうに眠るリアを揺らし、起きるのを待つ。

そこから5分ほどの間、俺は衣擦れの音によるハラスメントを受ける羽目になった。

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