第6話 襲撃
夜。
俺はアイリスの選んだ宿屋で、寝床についていた。四人が泊まれる部屋で、部屋の四つのベッドを一つずつ使うイメージだ。
「……シュン」
と、ゴソゴソと何者かが俺の寝床に侵入してくる。ちょっと高目の体温と小さな体躯から察するに……リアか。
「……どうしたんだ?」
「…………」
リアは無言で俺に抱きついてくる。
「一人で寝れないのか?」
「…………」
リアはこくりと頷く。なんだかんだ、親元を離れるのが初めてで寂しいのかもしれない。
俺は緩く抱きしめつつ、頭を撫でる。
すえうと、ぺしっと手がはねのけられた。どうやらうざかったらしい。
俺は跳ね除けられた手を下ろし、目を閉じる。そばにある温もりと、久しぶりのベッドの寝心地によって、俺は意識ががすうっと落ちていく。
その時。
「……シュン!」
アイリスが叫ぶ。俺は反射的に脇差フォームにした『心装』を展開し、リアを守るように魔術でシールドを張る。
一瞬の後、部屋に何者かが侵入してきた。
「白光」
部屋が白い光で満たされる。俺は光を反射しない黒い刃を『心装』で弾く。よくみると、液体がついている。毒だと俺は直感的に分かった。
「……はあ!」
俺は脇差をふるい、黒装束で顔を隠した暗殺者へと刀を振るう。
「……ちっ」
暗殺者は舌打ちをすると、脇差しを回避して天井へと跳ぶ。どうやら、応戦ではなく撤退を選択するようだ。
「……させませんよ?」
しかしそうは問屋が降ろさない。アイリスは空中に幾つもの鎖を生み出すと、暗殺者を拘束する。
「ぐっ」
俺は油断なく部屋を見渡す。どうやら、他の暗殺者はいないようだ。
「……ふむ」
アイリスは不機嫌そうに暗殺者を見る。暗殺者は気まずそうに身じろぎをした。
「……不要ですね」
「は?」
ぼっと暗殺者の服に黒色の炎が灯る。火はあっという間に全身に周った。
「ぐももももも、ぐも、ぐもももももも!」
暗殺者がこもった声で悲鳴を上げる。
俺はリアの目をそっと手のひらで隠し、目の前の凄惨な光景から遮る。
「どうせ情報なんて持っていませんし、処分していいでしょう」
と、アイリス。
1分ほどして、暗殺者はただの灰へと完全に姿を変えた。
「……さて、寝ましょうか」
アイリスはあっさりとそういうと、自分のベッドへと戻り、布団にくるまる。
「ええ……」
サンは正気を疑うかのようなすごい目つきでアイリスを見ていたが、やがて諦めたように自分のベッド……ではなく、アイリスのベッドへと潜り込む。
「おや、一緒に寝たいのですか?」
アイリスは嬉しそうにそういうと、サンをぎゅーっと抱きしめる。
リアはというと、こっくりこっくりと船を漕いでいる。こちらはこちらで、すごい胆力だ。
俺はリアを抱え上げ、ベッドに寝っ転がり布団を被せる。
俺も異世界に来て少々のことでは動じなくなった。それが功を奏してか、存外あっさりと眠りについた。
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