第1話 冒険者ギルド
冒険者ギルドの一階は、魔獣の素材の解体や売買が行われるスペースになっていたので、俺たちは2階へと移動した。
受付カウンターは意外にも少なく、5つほど。今はオフピークのためか、2つしか稼働していなかった。
しかし、その二つともクレーム対応に追われていたので、俺は依頼が貼り付けられているボードを眺めて暇を潰すことにする。
冒険者にはランクがあり、上からSSS、SS、S、A、B、C、D、E、Fだ。ちなみにアイリスは世界でも数少ないSSSランク冒険者だったらしい。
「すごい数だな」
「そりゃそうよ。都市中の調達依頼がここに入ってくるんだから」
都市の壁外にある資源の収集や、魔獣の調査・討伐が大半だが、街中の雑用依頼も多い。
中には、高い実力を持った高ランク冒険者向けの求人依頼もあった。
「……この“開拓団”ってなんなんだ?」
「森を切り拓いて新しい都市を作るのよ。大抵は魔獣に襲われるか、盗賊の根城になるか……まあ、失敗することが多いわ」
世知辛いな……
「今回は……いくつかの商社が合同でやるようね。私たちの旅の目的には合致し無さそうだけど」
「そうだな……お、終わったな」
一体どういう流れになったのか、クレームをつけていた冒険者が警備員によって窓の近くまで引きずられ、ぽいっと外に捨てられた。
「……行くか」
俺は空いた受付へと行く。
「冒険者になりたい」
「かしこまりました。では、こちらにお名前を。パーティを結成する場合は、パーティ名をお書きください」
そう言って受付嬢はガラスペンと紙を三枚、こちらへ差し出してくる。俺は受け取り、俺とサン、アイリスの名前を書く。
そして、名前の上に事前に決めたパーティ名である『渡航者』と記入した。
「承りました。では、しばしお待ちを」
受付嬢はそう言って奥のスペースへと消えていく。
アイリスから聞いていた通り、本当に審査もなく、属性も位階すらも聞かれることがなかった。
「お待たせしました。こちら、冒険者カードとなります。Dランクに到達するまでの間、再発行はいかなる場合においても認められていません。依頼を受注する場合は、依頼ボードに貼り付けられた紙をこちらへお持ちください。昇格試験を受ける場合は、お申し出ください」
案外トラブルもなく、あっさりと冒険者になることができた。
とは言っても、Fランクの冒険者なんてほぼ身分として認められていないが。
「……さて、情報屋に行こう。アイリス、頼む」
アイリスはこくりと頷いた。
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