第三章 情報屋

プロローグ

新たな仲間であるサンと共に旅を続けること三日。俺たちはようやく都市“テッタ”へとたどり着いた。


「すごいな……」

「そりゃ、副都だしね」


テッタは王国で二番目に発展した、サンの言う通りにいわゆる副都とも呼ばれる都市だ。

王都が政治を、副都は経済を支配するとまで言われるほどに、経済が発展した商業都市でもある。


都市の門をくぐるや否や、街の中心部へ向けて元の世界でもほとんど無いような大きな道が伸びているのが見える。


道の横には、色も大きさも様々な店が連なっている。その中には、カッシートの店もあった。

道路上では、客を呼ぶ声や、往来する人々の声。吟遊詩人が歌う声や、役人が布告をする声。様々な声が溢れかえっている。


見たこともない景色に俺は圧倒されていた。側から見れば、“おのぼりさん”のように見えていた事だろう。


「……で、どこに向かうの?」


と、サンが慣れた様子でそういった。

俺は我に返り答える。


「冒険者ギルドの後に、情報屋のところへ向かう。いなければ、買い物をして今日のうちに出発する」

「すごいスケジュールね。でもいいと思うわ。あいつらがここについたら面倒なことになりそうだし」


あいつら、というのはキュスターたちの事だろう。


「ああ。……アイリス、冒険者ギルドがどこか分かるか?」


アイリスはこくりと頷くと、すっと街の一角を指し示す。そこには、道路沿いにある建物の中でも一際大きい建物があった。

その隣には、さらに大きい建物がある。それぞれ看板には、冒険者ギルドテッタ支部、そして商業ギルドテッタ支部と書かれていた。


ギルドは交易の場もかねているようで、ひっきりなしに馬車や行商人が出入りしているのが見える。


「どいたどいた!」


と、都市の門からドタドタと男たちが叫びながら走る。振り返ると、巨大な猿のような魔獣を肩にかついで冒険者ギルドに向かっていた。


「すごいわね」

「ああ」


俺は頷きを返す。


「あの程度、すぐに倒せるようになりますよ」


アイリスがこともなげにそう言った。


と、白い服に身を包んだ女性が男たちが通った場所を通り、魔法で生み出した水で魔獣から垂れた血を掃除していく。


「あれは掃除人よ」

「……掃除人?」

「ええ。都市に雇われているの。意外と高給で、倍率も高いのよ」


掃除人の女性は汚れにしか興味ないと言わんばかりに、汚れを落とすとそのまま去っていく。


そこで、俺はこのテッタの街が、とても綺麗なことに気がついた。掃除人の存在のおかげだろう。


そんな一幕がありつつも、俺たちは冒険者ギルドの建物の中に入った。

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