第8話 追放、再び
一気に身体能力と魔力が上昇し、感覚が広がる。『心装』がさらに強靭に、そして鋭くなり、変形の自由度も上がった感覚がする。
そう、位階が上がったのだ。
俺はその場からジャンプし、護衛の頭を飛び越える。
「『土壁』」
盗賊が着地間際を狙ってくるが、俺は土の壁を生み出して着地地点を回避する。
そして刀を納刀し、回転しながら抜刀術を放つ。
見えない刀を回避できるはずもなく、周囲の盗賊が崩れ落ちた。
「そいつを撃て!」
そう隊長らしき男が叫ぶが、直後にすぱっとアイリスの魔法によって首が切断される。隊長と言えど、位階は上がっていなかったようだ。
と、プワオーという法螺貝のような音が響き、夜空にひゅうんと赤い閃光が上がる。
「……撤退、撤退!」
どうやら撤退の合図だったようだ。さあっと蜘蛛の子を散らすように逃げていく盗賊。そして、戦闘が嘘だったかのように陣地は静まり返った。
俺は『心装』の展開を解除し、アイリスの所まで戻る。そして、幌の上へと座り込んだ。
「よくがんばりました」
アイリスはそう言ってよしよしと俺の頭を撫でる。初めての戦闘による心労に、『心装』の痛みによって俺は抵抗する気力が無かった。
「……位階が上がったのね。おめでとう」
と、サン。少し羨ましそうな表情をしていた。
「ああ。ありがとう」
礼を言うと、サンはそっぽを向いた。
「……シュン様、お礼をさせていただけませんかな?」
いつの間にかこの商団を率いるカッシートが馬車へと近づいてきていた。俺は幌の上から地面へと飛び降りる。
「……奮戦ありがとうございました。シュンと、お連れの方がいなければ、我が商団は壊滅していたでしょう」
「おい。ちょっと待て!」
と、キュスターがカッシートのセリフを聞いていたのか、怒鳴りながらこちらへ走ってくる。
「それは俺と、俺の部下を侮辱しているのか?」
「いえそんなことは、私はただ、数の差があったというだけですよ。あなたはお強いですが、一対一に特化しているでしょう?多方面からの攻撃には商団は持ち堪えられませんよ」
「……ちっ」
キュスターは舌打ちをすると黙り込む。
「いかがでしょうか?今後も我々と行動を共にしませんか?」
「……いえ、今のところ一箇所に止まる気は無いので」
「そうですか。席は空いていますので、旅の道中その気になったのであればすぐに……」
「……そうだ」
キュスターはいやらしい顔つきになるとこちらを見る。
「お前が盗賊を引き込んだんだな?」
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