第4話 勇者

「ついにされたのか」

「ええ。10日ほど前にね。ひょっとして、この十日間街に入ってないのかしら?今どんな街でもその話題で持ちきりよ」

「そうなのか」


どうやら、俺がされたことは公表されていないようだ。それゆえに、話題にも上がってないのだろう。


「それにしてもどんな人なのかしらね、勇者様は。やっぱりイケメンなのかしら?」

「そうかもな」


俺のカメラアイによる記憶によれば、少し甘めのマスクのイケメンだった。


「……ま、勇者の相手は聖女に決まってるけどね」

「勇者、聖女……他にも召喚されたんじゃないか?」

「ええ。確か、勇者、聖女、剣聖、守護者、賢者、他には……えっと、呪い師だったかしら?」


正確には呪術師だ。俺以外の六人に関してはきちんと公表されたようである。


「ま、冒険者はあまりいい顔をしていないけどね。しばらくは王都周辺の魔物の討伐依頼が無くなるんじゃ無いかって言われてるし」

「そうなのか?」

「ええ。戦闘経験と、それから『位階を』上げるために、ね。普段は本気を出さない腐った軍が本腰を入れるって言われてるし」


『位階』とは、この世界のいわばレベルシステムのようなものである。

第一位階から第十位階まで存在していると言われていて、生物……特に魔物を殺す事で上昇するとされている。


上昇によって、その人物の全般的な能力がかなり上昇する。


ちなみに第二位階に入るのでさえかなり難しく、第三位階ともなるとほぼいない。


ちなみに、アイリスは驚きの第八位階である。これ以上の数字を持つ人間は、ほとんどいないそうだ。


「それで、いろんな商団に紛れて冒険者が王都を脱出してんのよ」

「……へえ。ひょっとして、ソルもか?」

「ええ。ま、私はけど」


サンはそう言うとうーっと体を伸ばす。


「冒険者事情はそんなところかしらね。ギルドも動きはないし、


「到着まで二週間……長いわね。それまで仲良くしましょ」


サンはあまりこの商団に愛着がないようだ。サンの抱える事情にも検討がついているし……俺たちの旅に誘ってみてもいいかもしれない。


と、むーっと横で頬を膨らませるアイリス。


「私とも、お話ししてください」

「ああ、うん……悪い」


情報交換に夢中になりすぎて、アイリスが置いてけぼりになっていた。

俺はアイリスに構って、なんとか機嫌を取ることができた。


Tips『冒険者』

自らの意思で壁外に赴き冒険をする人を『冒険者』と呼称する。『冒険者』の互助組織として、『冒険者ギルド』がある。

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