第2話 カッシート
俺はまず、刀を納刀したまま護衛の男と激しく切り結んでいる盗賊の男に近づき、居合を放つ。
特に抵抗されることもなく、男の首がすっぱりと切断された。俺は刀から感覚共有によって伝わってくる、肉を裂き、血飛沫を浴びる感覚に眉を顰める
切り結んでいた護衛の男は一瞬戸惑いを見せたが、すぐに立ち直って仲間の援護へと動く。
『……岩よ、我が敵を貫け』
俺は魔術陣を空中に投影し、詠唱を補助として岩をいくつも手近の盗賊に浴びせつつ、別の盗賊を刀で屠る。
戦場の均衡が崩れ、そこからは討伐戦となった。
「……ちっ。退け、退けー!」
それを見てとった頭と思わしき男が、そう声を張り上げて森の中へと消える。そして、仲間たちも次々と森の中へと去っていった。
「……ふう」
存外あっけなく終わった。だが、本当の戦いはこれからだ。
揉み手をしながら、馬車の一つからみるからに高級そうな服を纏った男がこちらへと歩いていくる。
護衛は戦闘終了後すぐだというのに、男を守るような陣形をとってこちらを睨んでくる。
「この商団を纏めております、カッシートと申します」
カッシートと名乗った男は低姿勢だが、油断なくこちらを見ている。俺はできるだけ堂々と、しかし虚勢に見えないように気をつけつつ言葉を紡ぐ。
「俺はシュン。ただの旅人だ」
「左様でございますか」
カッシートは頷くと、胸元からゴソゴソと金貨を二枚取り出す。
「こちらはお礼でございます」
「遠慮なくもらっておく」
約20万円……相場がどれくらいなのかはわからないが、おそらくは安い。俺はあえてそれに触れず、カッシートにある提案をする。
「……どうだ?俺たちを雇う気はないか?」
「雇う気、ですか?」
「ああ。王都からテッタへ向かうところだろ?ちょうど、俺たちの目的地の一つにかぶっているからな。双方の利益になると思うが」
カッシートは悩むそぶりを見せる。
「こう見えて、そこそこは戦える……護衛も人数が減ったようだし、次の街までどうだ?」
「……報酬はいかほどをお考えで?」
「食事はそっち持ちで、街まで二人合わせて白金貨5枚でどうだ?」
「……構いませんよ。ですが、きちんと戦ってくださいね」
「もちろんだ」
俺は頷き、カッシートと握手を交わす。
護衛の料金もおそらくは安いが……俺の目的はそれではない。
「さあ、早速出発するとしましょう。お二人は五号車の上にどうぞ。おい!さっさと準備を始めろ!馬車の整備をして、10分以内に出発だ!」
「「はい!」」
カッシートの号令に従い、全員が動き出す。
俺はそれを尻目に、アイリスと共に、五号車へと乗り込んだ。
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