第1話 戦闘!
俺たちは都市と都市を繋ぐ道を目指して、森を駆けていく。
ここ一週間のスパルタな訓練によって、森の中でもある程度は動けるようになった。
「……言ったことは覚えていますか?」
「ああ。道は安心できる場所では無い……だとろ?」
この世界での一般人の活動範囲は、基本的に街の中に限られる。街の外壁の外には、魔物や犯罪者といった危険で溢れかえっているからだ。
そしてそれは、道路であっても例外では無い。時たま軍が道路を警備することもあるくらいで、基本的に道路上の安全は保証されていない。
むしろ、安全を求めるのならば道路ではなく森の方を歩いたほうがいいくらいだ。
「……それならばよいです」
「っていうか、なんか音がしないか?」
「音、ですか?」
「ああ」
さっきから、カキンカキンという金属がぶつかり合うような、森の中では発生しないであろう音が響いている。
「……確かにしますね」
「なんの音なんだ?」
「武器がぶつかり合う、戦闘音です」
……おっと。
どうやら平和ボケしていたようだ。ここは異世界……日本では無いのだ。
「……知ってて黙ってただろ」
「さあ。なんのことやら」
そう惚けるアイリス。フードに半ば隠れているが、その口元には微かに笑みが浮かんでいるのが見えた。
「えーっと。どうしようか」
戦闘音、ということは明らかにトラブルである。自分から寄りつくのはあまり適切では無いような気もするが……
「もう遅いと思いますよ」
「……え?」
パッと目の前が開ける。話している最中に、道路に出てしまったようだ。
路上では、10台位の馬車が停り、人相の悪い汚らしい十数人の男たちの襲撃に遭っていた。
既にあちこちに死体が転がっていて、激しい戦闘の跡が伺える。
応戦しているのは、護衛と思われる男女十人ほど。人数差はあるものの、かなり善戦している。
とはいえ、旗色は悪そうだ。
俺たちはちょうど、その戦場のすぐそばに出た形だ。
「……謀ったな?」
「さて、なんのことやら」
アイリスは再び惚ける。俺が気づかない程度に徐々に進路を変更して、ここへ出るように仕向けたのだろう。
アイリスを追求する間も無く、戦場の人間……そして、馬車の中から様子を伺う非戦闘員の視線が俺とアイリスに集中するのを感じる。
––––ええい、ままよ!
「『心装』展開」
俺は刀に変形させた『心装』を喚び出す。
「加勢する!」
そして、俺は戦場へと飛び込んだ。
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