エピローグ

異世界への渡航の手段としてアイリスが示したのは三つ。


1.先代の“剣聖”による次元切断

2.次元魔法もしくは根源魔法による次元跳躍

3.転移魔術


つまり、


1.先代の『剣聖』の発見・交渉

2.属性『次元』もしくは属性『根源』の所有者の発見・交渉

3.異世界転移魔術の開発


のどれかを少なくとも達成する必要がある。


「どれが達成できそうだと思う?」

「……そうですね。どれも難度としては変わらないかと。強いて言えば、先代の『剣聖』の発見……だと思います」

「やっぱりそうか」


次元魔法や根源魔法を使える人間を探すのは難しそうだし、おら権力者や犯罪者と戦うことにもなりそうだ。そもそも、存在するのかも分からない。

魔術の開発をするのは、そもそも論外と言っても差し支えないだろう。


まだ実在がはっきりしている『剣聖』の方が見つけやすそうだ。


「ひとまずは先代の『剣聖』の発見を目指すとしようか。ちなみに、居場所の手がかりとかってあるのか?」

「ええ。各地を自由気ままに放浪しているそうですよ」


……それは手がかりというのか?


「情報屋を使えば、すぐに居場所がわかるはずです。彼ら情報屋は、都市を跨ぐ情報のネットワークを所有していますので」


なるほど。それならば、案外簡単に見つかりそうだ。


今日のうちに準備を整えて、明日にも出発することにしよう。ここに……いや、この国に留まっていてもあまりいいことは無さそうだ。


「ありがとう、アイリス。この恩はいつか必ず返す……明日、ここを出発する」

「……え?」

「え?」


アイリスが自分は当然だと思っていたことを否定されたとでもいうような声をあげる。

俺とアイリスは視線を合わせる。


「……えっと、その……わ、私も連れて行ってくれませんか?」


と、アイリス。


「逆に、ついてきてくれるのか?」


この世界の人間であり、魔法や魔術に詳しい。そして戦闘力も高く、回復能力まで備えている。

そんなアイリスがついてきてくれるのであれば、頼もしいことこの上ないが……


「ええ。異世界への渡航にも興味がありますし、それに……えっと、その……久しぶりの人との繋がりなので、大事にしたいというかなんというか……」


慌てているのか、なんだか言ってはいけないことまでダダ漏れになっている。

俺は聞かなかったことにして、アイリスの瞳をじっと見つめる。


「それじゃあ、アイリス……一緒に旅をしよう」

「…………!はい!」


アイリスは美しいオッドアイを輝かせながら、満面の笑みで返事をした。

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