　この、いわば異世界転生の王道を行く作品も、もちろん少なくありません。

　たとえば最近アニメ化が始まった『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる　～弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になってた～（１）』（井上菜摘漫画, 未来人Ａ（原作）、マガジンポケットコミックス) 。

　こちらの世界で心臓発作で急死したサラリーマンが、異世界の地方貴族の家に生まれ変わる設定はありふれています。けれど、眼に映る自分の手が赤ん坊のまんまるな手で、母親らしき人物の微笑が視野いっぱいにアップされて困惑するという、新生児としての最初の光景から異世界人生が始まっているのは、転生の女神やら入れ替わりやらという余計な設定がないだけ、かえって新鮮です。

　ただし、主人公のアルスが異常に早熟で、三歳にして図書室の本をみんな暗記したなどということになるのは、前世の記憶を出生時にほぼ全て備えている以上、仕方のないことかもしれません。