第3話 『聖者無双』の転生設定は転移との不完全混成

三十代サラリーマンが苦労の末に営業ノルマを達成したところに、通り魔の銃弾で撃たれます。その死の間際‥‥

「昇進する‥‥までは こんなところで‥‥死ぬわけにはいかないーー」

ドサッ‥‥〔倒れる音〕

【不運な魂よ‥‥】←転生の神の声か

「えっ‥‥?」

【転生させてやろう】

「転生!?」

【地球と同じ水と大地の惑星へ】

「あれ‥‥?スーツじゃない!?」

【魔法があり魔物がいるそんな世界へ 基礎知識は授けよう 生き延びたければ『ステータスオープン』と念じ、ステータスをひらけ】

「ス‥‥ステータスオープン!?」

ブゥゥン

「まるでゲームじゃないか‥‥!」

【設定のリミットは一時間 残りは自分で決めるがいい 次の人生が幸福であるように願っている】

「‥‥というわけで、転生しちゃった 神さま?の力により、俺は惑星『ガルダルディア』に転生した」

草原に、異世界の服装の14歳の少年、「ルシエル、ジョブ:治癒士」として立ち尽くす場面‥‥

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と、これがイントロ。

 この『聖者無双』(秋風緋色(漫画)・ブロッコリーライオン(原作)、講談社)という作品は、絵に清潔感もあり、主人公は治癒師だから殺戮があるでもなし、無双という割には努力型だからけっこう好きなのですが、この冒頭はないだろうと思ってしまいます。

 なぜなら、「14歳の少年」の肉体は、いったいどこから湧いたのでしょうか。

 元の世界での肉体は滅びているのだから、異世界転移したというわけでもなし。

 いくら転生の神だからといって、無から肉体を作りだすのはルール違反でしょう。

 このままでは、転生と転移の不完全混成になってしまいます。


 合理的に考えれば、ルシェルという異世界の少年が元からいて、その肉体を、異世界から来た魂が乗っ取ったのだ、ということにならないでしょうか。

 事実、そのような設定の作品があるのです。

 それがたとえば、『異世界薬局』です。

 

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