ローズside

私は昔はお姉様のことが嫌いだった。お姉様は正妻の子、私は妾の子だった。5歳のときに母が亡くなり、デュラン伯爵家に引き取られることになった。お姉様は明るく、真っ直ぐな人だった。引き取られてすぐは、一緒に遊んだり、たくさんお話しもしていた。だけど、侍女が「妾の子を引き取るなんて、リリーお嬢様がお可哀そうだ」と話しているのを聞いてしまった。お姉様も実はそう思っていたのではないかと思い始め、関わるのを止めることにしたのだ。お姉様は何度も私に会いに来てくれていたが、それでも無視し続けた。勝手な思い込みで最低なことをしてしまったと反省している。問題が起こったのは私の紹介の場として開かれたパーティーでのことだった。貴族は血筋を大切にする。私が妾の子だと知ったどこかの貴族の令息たちが私のことを馬鹿にし始めたのだ。問題を起こしたくはなかったので、頑張って耐えていた。そんなとき、口々に「きっとお前の母親はろくでもないやつだったんだろ」「娼婦だったんじゃないのか」「踊り子だったかもしれないぞ」と言われ腹が立ち、つい手を出してしまいそうになったそのときだった。

「何をしているの、あなたたち」

「こいつにちょっと俺たち貴族について教えてやったんだ。お前もこんな奴が義妹だなんて大変だよな」

「この子は正真正銘、私の義妹よ。確かに、母親は違うけれど、義妹であることに変わりはないわ。これ以上勝手なこと言わないで!!」

お姉様は何も言い返せずにいる私の代わりに、言い返してくれた。まさしく、私にとってはヒーローだった。

そう言われた令息たちは走って去っていった。

その後、何人かの侍女が私を妾の子だと侮り、私の持ち物を盗んで売っていたことが発覚し、辞めさせられた。そして、使用人全員に再教育が施されることとなった。

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