ディラン伯爵家にて

〜ディラン伯爵家 本邸〜

「あ、あなたは!!ジェラルド王子!!どうしてこちらに!?」

「久しぶりだな、ディラン伯爵」

ディラン伯爵は外交官を務めている人物だ。彼の手腕は素晴らしく、他の外交官からも一目置かれているほどだ。


「ど、どうぞおかけください」

「ああ、驚かせてすまない。今日は伯爵のご令嬢、リリー嬢に会いに来ていたのだ」

「リリーに、でございますか?」

「ああ、そうだ。リリー嬢とは10年前に1度会ったことがあってな」

「10年前ですか…」

「ああ。メイから話は聞いている。リリー嬢の過去のことを、な。俺のことも忘れられていたよ。そこで、俺たちはしばらくこの辺りに留まることにした」

「えっっ!!しょ、承知いたしました。すぐにお部屋をご用意いたします」

「いや、その必要はない。近くに宿を用意させているからな」

「しかし…」

「大丈夫だ。それより、リリー嬢とはもう1度、1から思い出を作りたいと思っている。会う機会を用意してもらえないだろうか」

「承知いたしました」

「あっっ!!肝心なことを聞き忘れていた。リリー嬢には婚約者はいるのか?」

「いえ。貴族の娘ですしどこかに嫁ぐべきだとは分かってはいるのですが、父親としてはいささか心配で」

「そうかっ、良かった…」

「え?」

ディラン伯爵は思わず聞き返した。

「はっ、いや、なんでもない」

(本当、リリー嬢のこととなると態度変わるよなあ、我が主は…)

(やっぱ普段と全然態度違うし伯爵も驚くよな、そりゃ)

「そういえば、一つ確認しておきたいことがあるんだが、リリー嬢は10年前王都近郊には住んでいなかったのか?」

「いえ、王都の南方に私の姉が住んでおりますので、そちらの方に預けていた時期がございます。」

「南方だったのか…」

俺はあの時、北方を探すように指示を出した。なぜなら、俺と別れた後リリーがそちら方面に向かうのが見えたからである。てっきり北方に住んでいるものと思い込んでいた。真反対だったのなら、見つからなくて当然である。思い込みとは真に怖ろしいものだ。

そして、一通り話し終えたジェラルドたちは宿に向かって行った。


「よし、今夜はリリー嬢を振り向かせる作戦を考えるぞ。二人とも協力してくれ」

リックは「いっぱい考えるぞ!!」となぜか張り切っていたが、ロベルトはすでに長旅で疲れ切っていたこともあり「なぜ、私が」と最後まで言っていたが、結局一緒に考えることになった。その作戦会議は夜通し続き、翌朝ロベルトは疲れ切っていたという。

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