リリーの過去
リリーと話しをした後、ジェラルドはかなり落ち込んでいた。そんなジェラルドを見た友人たちが慌てて側で励ましてくれている。
「きっと思い出してくれますよ」
「他にもいろんな女性がいるんだからよ。お前の好きそうな女性を見つけてきてやるよ」
「そういう問題じゃないだろ」
「じゃあ、どうすればいいんだよ」
そんなこんな話をしていると、1人の若い女性に話しかけられた。
「あの、すみません」
「はい、どうかされましたか」
「実は私はリリーお嬢様の専属侍女をしておりますメイと申します。先ほどの会話を少し聞いてしまったのですが、もしやお嬢様にお会いされたのは10年前のことではありませんか」
「ああ、そうだが、どうしてそのことを?」
「お嬢様から王都でとある男性に出会われたとお聞きしたことがあるんです。お嬢様はとても楽しそうに話していらっしゃったので覚えているんです」
「…だったらなぜ、忘れていたんだ?」
「…それが今から9年前のことです。お嬢様は事故に合われ記憶喪失になってしまったんです。普段は安全な道だったのですが、1匹の動物が飛び出してきて、避けようとしたところ馬車が転落してしまったんです。幸い大した高さでもなかったので、命は取り留めたのですが」
「っそんなことが……。それで記憶を失ってしまったと。リリー嬢はもう大丈夫なのか?他に障害とかになっていたりしないか?」
「はい。それは大丈夫でございます」
「そうか、それなら良かったが、何もかもを忘れてしまったのか?」
「はい。家族のことや関わりが深かった方々のことは覚えていらっしゃるのですが、それ以外のことはさっぱり。事故のこともお忘れです。お医者様によりますと、事故のこと以外の記憶でも無理に思い出させない方が良いとのことでしたので、敢えて誰も何も触れないようにしておりました」
「ああ、正しい判断だろう。それにしても俺は1回しか会っていないから忘れられてしまったということか。ということは、だ、俺のことがどうでもよかったから忘れたとかいうわけではないと」
「はい、もちろんです。お嬢様はまたお会いできることを楽しみにしていらっしゃいましたから」
その言葉を聞き、ジェラルドの顔がみるみるうちに明るくなっていった。
「よし、次にすることが決まったぞ」
「何をされるのです」
「決まっている。リリー嬢との思い出作りだ」
「はい?」
「これから今まで会えなかった分、たくさん話して、リリー嬢を楽しませるんだ。そして、絶対に振り向かせて見せる!!しばらくはこちらに留まることにするから、そのつもりでいろ」
「…それならとりあえずディラン伯爵に話を通すべきでは」
「そうだな。メイ、ディラン伯爵に話があると伝えてくれ」
「承知いたしました」
これはしばらくどころではなく、長期滞在することになりそうだとロベルトたちは思ったのである。
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