再会
今はまだ朝の6時である。ジェラルドは先ほどロベルトとリックらと共にコンフィーヌ地方に向けて出発したところだ。コンフィーヌ地方は王宮からはかなり遠く、馬で半日かかる場所にある。騎士団長は任務があるため来れなかったが、リリーと思われる女性を見た騎士団員を数名護衛としてつけることになった。山での訓練を終え、帰るときに立ち寄った村で見かけたらしい。
今は王都を抜けたところだ。王都はいつも混み合っているが、まだ朝早いので当然ながら人が少ない。ジェラルドは昨日、騎士団長から聞いた話について考えていた。
「リリー嬢ですが王都に行ったことはないとのことでした」
「それはどういうことだ」
「分かりませんが、王子に見せて頂いた姿絵そっくりの方でした」
ジェラルドは騎士団長が任務のため各地に赴くのでどこかでリリーを見つけられるかもと思い、絵師に依頼して書かせた姿絵を見せていたのである。
(本当に行っていないのか、それともまさか忘れてしまったのか。会って確認してみるしかないな)
途中で馬を休めながら走り、しばらくすると湖が見えてきた。コンフィーヌ地方の入り口付近にあるというユバル湖である。どうやら到着したようだ。騎士団員によると、近くに見えている民家の近くでリリーに会ったようだ。ジェラルドは通りがかった民にリリーのことを聞いてみようと思い、声をかけた。
「少しいいか。この女性を探しているんだが」
そう言ってリリーの姿絵を取り出した。
「ああ、もしかしてリリー様じゃありませんか」
「ああ、そうだ!!知っているのか」
「はい、もちろんです。この辺りはディラン伯爵領でして、リリー様はディラン伯爵家のご令嬢ですから」
教えてくれた民に礼を言い、ディラン伯爵家の屋敷に向かった。
屋敷から帽子を被ったきれいな銀髪の女性が出てくるのが見えた。その女性こそジェラルドが探し求めていた少女、リリーだった。10年の月日が経ち、大人びて、以前にもまして綺麗になった彼女を見て、ジェラルドは見惚れて、息をするのも忘れていた。
(この反応、彼女がリリー嬢なのか)
ロベルトはすぐに気が付き、固まっているジェラルドに話しかけるよう促すことにした。
「声をかけに行かれてはいかがですか、ジェラルド様」
「あっああ、そうだな。は、話しかけてくる」
(大丈夫かよ…)
半ば挙動不審になっている友人を見て、不安に思いつつ、様子を見守ることにした。
「えっと、、、リリー嬢、元気にしていたか」
「あなたは誰」
「っっつ……ジェラルドだ。昔王都で会ったことがあるんだが…」
ジェラルドはショックを受け、動揺していた。本当に自分のことを忘れてしまったのか、約束のことも何も覚えていないのか…と。
「ごめんなさい。あまり昔のこと覚えてなくて」
「……そうか。分かった。急に声をかけて悪かったな」
そう言ってその場を後にした。
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