良い知らせ

 俺は今、宰相の息子のロベルトと共に執務をこなしている。ロベルトは俺の数少ない友人の1人だ。昔からかなり優秀で次期宰相としても名高いため、近寄ってくる女性が後を立たない。俺はというとあれから10年、近寄ってくる女性を上手く躱しつつ、王都シュテルンを中心にリリーを探し続けている。リリーに出会った日の翌日、リリーの調査を指示した。家門を聞かずとも調べればすぐに分かるものだとばかり思っていたのだ。しかし、それが間違いだった。該当人物が1人もいなかった。リリーの容姿はわりと目立つため、見逃したなんてことはまずありえない。消極的だったパーティーにも積極的に参加しているが手がかりすらなかった。一体どこに行ってしまったのか、もう会えないのかと諦めかけていたその時だった。バンッと扉を開く大きな音が聞こえた。そこには騎士団長の息子で古くからの友人リックが立っていた。

「何事だ。騒々しい」

「ロベルトか!!久しぶりだな」

「全くお前は……。それで何をしに来たんだ」

「っそうだった!!良い話を持ってきたんだ。なんと親父がリリー嬢に似てる人に会ったらしいぜ」

「何!?どこで会ったんだ!?」

先程まで無言で執務を淡々とこなしていたジェラルドが急に反応し大声で捲し立てる。さすがのリックもジェラルドに驚き数歩後ろに下がった。

「お、親父の話ではコンフィーヌ地方で会ったって」

「よし、行くぞ!!」

「行くって今からか。今からだと帰って来れないんじゃないか」

「どこかに泊まればいい」

「まあ、それもそうか。行くか」

(はあ…)

ロベルトはジェラルドが頑固な性格であることを知っていた。1度決めたことは余程のことがなければ覆さない、それがジェラルドだった。

(特に長年探し続けていたリリー嬢が見つかったんだ。おそらく止めたところで無駄だろうな)

「…少しお待ちを。急には護衛の用意が出来ませんので明日までお待ちください。よろしいですね」

ロベルトの圧に二人は頷くしか出来なかった。

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