第20話 情けない男


 オオンモールの屋上に車を出してそこで飯を食べる。大きな亀裂があるのでそこまで持たないだろうな。

 まぁ今日明日にどうにかなることはないだろうが崩れるのを待つだけなんてな。中のものを明日もう一度見てまわって必要そうなものは収納して行こう。


 屋上で星を見ながら飯を食っていると平和だった頃が懐かしいな。


「はぁ、なんでこんなことになったんだろうな」

「さぁな、わかんないもんだよな」

 と2人で話して車の外で寝る。

 朝方は冷えてきたので寝袋に入って寝ている。

「ゔー、ちょっとひやっとするな」

「だな、あったかいもの食うか」

 お湯を沸かし、カップ麺を食べるとあったかくなりようやく目が覚めてくる。

 とここで、昨日の男達が現れた。

「お前らがここを解放したのか?」

「そうだが?」

「そうか、昨日はありがとう!力が手に入ったよ」

「ふぅ、そうか、良かったな」

 と麺を啜る。

「あ、オークの落とす肉は食べれるからな?」

「えっ!マジか!食えるのか?」

「食えるぞ!まぁ見た目があれだが美味かったぞ」

「そ、そうか!よし!」

 と男達は下に戻っていった。

 

 飯を食い終わり、さて動き出そう。

 車を収納して装備をつけ原付に乗り、もう一度中を見て回ると結構収納に入れてないものがあったので収納して行く。現金もそれなりに取っておく。ガソリン代やらで結構いるからな。


 一通り見て回ったので外に出る。

 ここから東京に入る。

 道が悪いので途中から歩きにした。

 モンスターが我が物顔で闊歩しているので倒しながら歩いて行く、江戸川区から葛飾区まで来てみたがモンスターばかりだな。

 ようやく道が走れるようになったので原付を出して走り出す。


「なんかいるぞ?」

「お、人みたいだな」

 と原付を収納して声をかける。

「おーい、大丈夫か?」

「人だ!良かった!まだいたんですね!」

 と駆け寄ってくるが何日も風呂に入ってないようで臭いな。声には出さないがな…

「なんか食い物持ってませんか?」

「あるからちょっと離れてくれるか」

「あ、ああ、すいません」

 と弁当を渡すとがっついている。


「オッサンはどうやって生き延びたんだ?」

「モグモグ」

「あぁ、食ってからでいいよ」

「んくっ!お、俺は外回り中に地震が来て!で道路は割れるしビルは傾くしで逃げ場がなかったんですがなんとかなったんです。ですがそのあとモンスターみたいなのが出てくるしで!本当に生きた心地がしなかったですよ!」

「そうか、ここらにジムはないのか?」

「あ、あります、あそこですね」

「よし、飯食ったらそこに行こう!」


 オッサンを連れてジムに行ってシャワーを浴びさせる。

「つ、つめたいけど気持ちいい!」

 と言いながらシャワーを浴びるとようやく匂いが落ちたので着替えにジャージを渡す。

「ありがとうございます!やっと人間らしくなりました!」

 と笑うおっさん。

「んで他に人は?」

「見てないんですよ!不思議なことに!」

「多分どこかに避難所があるんだろうな」

「とりあえずはダンジョンだなぁ」

「そうだな、戦えるようになってもらわないとな」

「は?え?」

 よし、行くぞ!

 とゴブリンが出てくるところを探して回るとようやくあったので入って行く。

「え!行くんですか?」

「そう行くの!」

「嫌ですよ!助けて!」

「いいから来い」

 と無理やり連れて行く。

 アキラが倒してくれるから俺はおっさんを掴んで引っ張って行くだけだ。


「ほら、これに触れろ」

「は、はい、ウッ…な、なんですかこれ?」

「なんてかいてあった?」

「そ、槍術です」

「なら槍だな」

 と槍を渡しておく。

「え、これで私に戦えと?」

「戦えるようになってるから行け!」

 とゴブリンの前に出すと自然に体が動いて突き刺してゴブリンを倒している。

「お、うおっ!え!これ私が?」

「そうだ、これなら大丈夫だろ?」

「待ってくださいよ!1人ですか?」

「男なんだから1人でいいだろ?」

「いーやーだー!」

「置いて行こう」

「待って!」

「なんだよ!男なんだから大丈夫だろ!」

 男は情けないことにしがみついて離そうとしない。

「男でもです!着いてきてください!」

「はぁ、わかったよ」

「よ、よし!私も頑張りますので!」

「「はぁ」」

 一回層のボスはホブゴブリン!

「あ、あれも勝てますかね?」

「行けるから大丈夫だ!」

「よ、よぉーし!」

 なんとか辛勝というところか。

「ヒール」

「い、痛かったです!これ以上は!」

「次はオークだから大丈夫だ」

「本当ですね!い、行きます!」

 といって2階層はファングボア。

「い、イノシシじゃないですか!」

「あんま変わらん!行け!」

「ひぃー!」

 なんだかんだで槍を使いこなして倒している。俺らは後ろでこっちにくるやつを倒すだけだ。そしてドロップは普通のカバンに詰めて行く。

「よ、し!レベル10になりました!」

「なんにしたんだ?」

「槍術と火魔法なので火魔法です」

「はぁ、槍術とれよ!!」

「な、なんで?」

「中級槍術になったのに」

「それを早く言ってくださいよ!」

「まぁ取ったものはしょうがないから次いくぞ」

 ボス部屋はグレートボアだ。

「無理無理!あれはデカすぎ」

「たくっ!ナツ!」

「あいよ!サンダーインパクト」

『プアッ…』

 と言って消滅した。

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